第35章 絶対君主の言いなり お相手:煉獄杏寿郎 R-15
その義勇の言葉は
らしからぬ…と杏寿郎は感じた
あの義勇が自分から
そんな提案をして来るだなんて
よっぽど自信がある…のか?
「今までその様な提案を君から
俺は、聞いた事がないが?
……そんな信頼できる部下が居たのか?」
「今年の新人だが…な。
変わった能力の持ち主だ…。
犬みたいに鼻が利く奴なんだ……」
「だが、人なのだろう?
使い物になりそうか?…また、
近い内に…戦があるぞ?」
そう言って義勇の顔を見ながら
ニヤリと杏寿郎が笑った
2人が槇寿郎の住まう
上王廟に到着すると
そのまま槇寿郎の待つ
謁見の間に向かう
上王である槇寿郎は
王権こそは無い物の
位としては王よりも上になるので
その御前に杏寿郎と義勇が跪く
「杏寿郎…、参りました。
上王陛下……。
ご機嫌は麗しゅう……
あられますでしょうか?」
紫色の布地の張られた
玉座に座るその槇寿郎の顔は
どう見ても機嫌が良くは見えないし
殺気じみた気迫を
義勇も感じていたので
自分の幼馴染ながらに
コイツはとんでもない奴だと
そう思わずには居られない……
「ふざけているのか?お前は……」
その声からも 相当にご立腹な
ご様子は十分に いや 十二分に伺い知れたが
俺の隣の 幼馴染であり
古くからの親友は……それを知りながらに
「いえ。上王陛下…俺は至って…
真面目に言っているのでありますが?
して、本日は……どの様なご用件に
あられますでしょうか?陛下」
「相変わらず、俺を敬うつもりのない様な。
ふざけた物言いをする奴だな…、お前は」
「俺は…、貴方がさせた事を
認めるつもりも許すつもりもありませんので。
俺がそれを飲んだのは…他でもない」
つまらないとでも言いたげに
ふんと槇寿郎が玉座に頬杖を付いたまま
杏寿郎に冷ややかな視線を向けて来る
ふっっと嘲笑すると玉座の隣に置かれている
ブドウ酒の入った瓶を手に取り
それをグラスに移す事もなく
その瓶に口を付けて
グイ―――っと飲み干す
かつては……西に獅子王ありとまで
近隣の国から恐れられていた王が
こうも 見る影もなくなってしまう物なのか…
「お前が俺の出した、条件を
飲んだのは、千寿郎の為だとでも
言いたいのか…?杏寿郎。安心しろ、
お前との約束通り……に、
千寿郎にはさせている」