第35章 絶対君主の言いなり お相手:煉獄杏寿郎 R-15
その砂の中から
白い丸い物が……姿を現して
『デザートローズ…ですね…』
『お探しの砂粒ではないが……、
これを…貴方に…
渡したいと思っておりました』
ポツッ……と絵本の上に
みくりの涙が一粒落ちて
絵本の中の女性もみくりと
同じようにしてその目から
涙を流していて
その物語の続きを……読みたいと思うのに
涙で視界がぼやける
「デザートローズは…、別名砂漠のバラ
とても脆い、持ち歩くには適していない
握りしめるだけで壊れてしまう…。
この青年の…彼女への想いが……
伝わって来るかの様です…ッ」
「大丈夫ですよ。みくり姫様。
ちゃんと、彼の想いは
彼女に届いております故」
そう橘に促されて
その結末を見届けなくてはと
みくりがその絵本の続きに目を遣ると
ふんわりとその女性が
微笑んで愛おしそうに
そのデザートローズを手に包んで
胸に抱くと
みくりが彼女の台詞を読みあげる
「私は、今までこんなに美しいバラを
見た事がございません……、
デザートローズは想いの化石…
このバラに込められた、貴方の想いを
確かに……受け取りました…ッ…」
「私はこの物語は…、砂じゃないのかと
幼少期は疑問に思っておりましたが。
こうして、大人になってから見れば
砂ではないが、確かに……その想いの
意味をこうして、感じ取る事ができる……」
彼の手の中の
一握の砂の中には
デザートローズが……あったのか
杏寿郎があの時に 言っていたのは
砂の中にある 答えは…
この物語だったのだろう…
「枯れる事のない……愛」
そう橘が言って
みくりが顔を上げると
そこには穏やかな笑みを浮かべた
橘の顔があって
「枯れる事のない…愛…?」
「デザートローズは、
砂漠に咲くバラですから…こうして
バラの形を形成するのに…100万年の
時を……経ているのですよ?」
そう言って鉱物について
記されている本をパラパラと開いて
デザートローズについて
記されているページを開いて
みくりの方へ手渡して来る
「決して枯れる事のないバラは
永遠の愛の象徴なのかも知れませんね?
うーん、なかなかにロマンチックだ。
おとぎ話らしい、おとぎ話ですが…」