第35章 絶対君主の言いなり お相手:煉獄杏寿郎 R-15
ほんの一握りの
一握の砂の中からでも
その一粒の砂を探し出すのは
難しい事の様に そう感じてしまって
その上…どこまでも続く砂漠の
どれだけあるかも分からない
数多の 砂の中から
たった一粒の砂を…見つけて来いだなんて
「彼は…、見つけられたんですか?
その…、一粒の砂を…」
みくりが橘に問いかけると
橘がみくりが膝の上に
置いている本を指さした
「次のページの……、
この挿絵を…良く…御覧になって下さい」
物語の続きはこうだった……
彼はそのまま砂漠から帰らずに
そのまま 半年がたった頃
砂漠を行く商人が
砂漠の真ん中で砂を見つめる
その青年を見つけて声を掛けた
『兄ちゃん前に、俺が通りかった
時にもそうしてたが、何してんだい?』
青年が静かに答えた
『砂を探しています。
彼女が欲しいと言ったので』
『で、その探し物は見つかったのかい?』
その商人の問いに
青年は首を左右に振る
『今日は満月です。私は…半年の間に
青く輝く砂粒や、赤く透ける砂粒
真っ白な砂粒……を見つけましたが…。
そのどれもが…こうして満月の夜に
照らされて輝く砂には…敵いません』
商人が手に持って引いていた
ラクダの手綱を少し引くと
一頭のラクダの裏にもう一頭
ラクダが連なって繋がれていて
そのラクダの上に
頭を布で覆った人が一人
乗っていたのに気が付いて
スルッとその人物が
被っていた布を降ろすと
その銀色の髪に月の光を受けて
白銀に輝く
彼女だ……
その顔を見て
青年が目を見開いたが
その後にその顔を曇らせる
『すいません……私は、貴方の
望む物を未だに見つけられずにいる……』
『もう、貴方は見つけておいでですよ』
そう言って彼女がにこやかに
微笑んで そのあまりの
美しさに目を奪われてしまう
『貴方が美しいと思って、その
革袋に集めて居た砂粒よりも
今夜の様な、満月の夜の……月を受けて
こうして輝く砂が一番美しいと…。
先程、貴方が…仰られたではないですか……』
『これは……偶然、砂を探してる時に
見つけた物だが……貴方に』
青年が女性に手を出すように促して
その手に何かを握らせる
一握の砂……だ
握らされた一握の砂が
指の隙間からサラサラと
零れ落ちて行く……