第35章 絶対君主の言いなり お相手:煉獄杏寿郎 R-15
「折角、不知火を
こっちに連れて来たんだ。
競争でも、しないか?みくり」
「ええ、構いませんよ。
彼の走る姿も見たいですので」
「なら、決まりだ。
ルールはどうする?障害物は
ある方が良いか?ない方が良いか?」
内周は障害物のあるコースで
その外を取り囲むのが
障害物のないコースだった
「でしたら……、障害物を
2周して、外周を1周する
合計3周で如何でしょうか?」
「随分と、余裕があるようにあるが?」
話をしながらも自分でみくりが
黒曜の背に鞍を付けると
鐙(あぶみ)に足を掛けて
馬の上に乗った
そして……いざ
彼女との勝負をして
気が付いた事があった
さっきの馬捌きも相当だったが
あれはほんの肩慣らしだったのだと
馬も名馬である韋駄天の血統なのは
俺の馬も彼女の馬もそうだが
襲歩の速度のままで
障害物を物ともせずに
減速する事もなく
突っこんでいく様な
そんな乗り方は……余程の
馬との信頼関係がないと出来るものじゃない
恐れ……を感じれば
それは馬にも伝わる
馬は乗っている人の感情を
つぶさに感じ取るからな
勝負が付く頃には
運動場の周囲に人だかりが出て来た
俺が馬術の練習をするのを
見物に来るのは
王宮の兵士もではあるが
俺の妃の中にも
俺の馬術の稽古を見に来る者はある
その中でも良く来ているのが
生き物が好きな
穏やかな気性をしている
撫子だった
「スルタン様、あちらの方は…
確か、第5王妃の撫子姫様で
あられますでしょうか?」
柵の向こう側に居る
撫子の姿を見つけて
みくりが俺に確認を取って来た
「ああ、あそこに居るのは…撫子だが。
ん?珍しいな…、あまり外に出ないのに
今日はどうかしたのか?白菊」
白菊と杏寿郎が木の向こう側に
向かって声を掛けて
その木の陰から
独りの女性が姿を表した
その艶やかな真っ黒の髪を
きっちりとお尻までの長さで
切りそろえられた髪型をしており
澄み切った水の様な青い瞳をしている
まるで…日本人形の様な
そんな お妃様だった
「別に…、誘われたから来たの…、
撫子さんに。馬…、見に行かないかって。
ねぇ、貴方の乗ってるその馬。
その…馬は、スルタンからの贈り物なの?」
そう突然に
白菊姫がこちらに話しかけて来て
その瞳に見つめられてしまう