第35章 絶対君主の言いなり お相手:煉獄杏寿郎 R-15
目は口程に物を言う……とは言うが
今の彼の勝ち誇ったような
目はどうだろうな…
自分の主人に馴れ馴れしくしている
俺の存在が 彼からすれば
気に入らないのかも知れんが
人の恋路を邪魔する奴は
馬に蹴られて死んじまえ…とも言うが
この場合は……俺がみくりに
ちょっかいを出そう物であるなら
俺がこの馬に蹴られそうでは……あるな
よしよしと愛おしむ様にして
みくりが黒曜の顔を撫でながら
「ダメよ、黒曜?彼は…この国の
主なんだから。そんな事を…
考えてちゃ…。それに心配なら
要らないと私は思ってるから…。
話、したんでしょ?そっちの彼と」
馬小屋で馬の世話をしている者が
真っ白の毛並みの馬の手綱を引いて
白馬をこちらへと連れて来る
「彼は、スルタン様の馬にありましょう?」
「おい。みくり。彼はかなり
気性が荒くて、気難しいんだ。
今までも、彼に乗ろうとした者が何人も
彼に振り落とされているからな!」
「ふふふふ。それはそうにありましょうね。
不知火は、……自分の走りに付いて来れる者
しか乗せないと決めているそうですよ?」
みくりの言葉を聞いて
杏寿郎がハッとする
俺は彼女に この馬の名を教えていないが…
「君は、馬の言葉でも分かるのか?」
「ええ。何となくイメージ…でですが。
でしたら、私が乗ってみても?それに……
彼は、とても気位が高くありますね。
スルタン様の馬に相応しいと言う自信に
満ちておりますから…。もしや、
韋駄天の血統にあるのですか?不知火は」
「ああ。何故…不知火が、韋駄天の
血統の馬だと?」
「黒曜は黒い毛並みをしておりますが
ここの耳の後ろの所の、この部分に
星があります。不知火は白い馬ですので
星は分かりにくいですが…この部分の
同じ部分の毛の色が若干違います」
みくりの言葉に
杏寿郎が不知火の毛色を見るが
白い馬の白い星など見て取れるのか?
いや……目を凝らすと
その部分に小星ぐらいの
親指の大きさの色味の違いがあるか
「でしたら…、不知火は
黒曜とは兄弟馬にありますよ?
黒曜も、韋駄天の血統馬ですから」
「そうか、俺の馬と君の馬は
同じ親を持つ兄弟馬だったのか。
その馬のその速さも、韋駄天の
血統ならば納得だな」
不知火の顔を杏寿郎が撫でながら言った