第35章 絶対君主の言いなり お相手:煉獄杏寿郎 R-15
「君の馬か?」
「ええ。黒曜は私の馬にあります…。
まさか、父が黒曜を
こちらに届けて下さっているなんて。
夢にも思っておりませんでした…」
黒曜石の名に相応しい
艶やかな毛並みをした馬だった
「いい馬だな。
その身体と毛並みを見れば分かる。
君は流鏑馬が得意な様だが、その馬の
襲歩はかなりの速度になりそうだが?」
よしよしと黒曜と言う黒い馬の頭を
みくりが撫でると
「黒曜は、元々…は父の馬でしたので。
私の16歳の誕生日に父が馬を
贈ってくれると言ったのですが。
新しい馬ではなくて、彼が欲しいと
強請ったのです。ただ…短い距離を
速く走れる馬とは…、黒曜は違いますから」
グイグイと黒曜が
みくりの顔に自分の鼻先を寄せて来て
しきりに何かを訴え掛けている様にあった
その様子を見て みくりが
自分の口元を抑えながら笑うと
こちらに視線を向けて来て
「運動場を…お借りしても?」
「ああ。勿論だ。彼も君に
乗って貰いたいと言っている様だからな。
少し待つといい、今鞍を乗せる……っと」
「鞍は結構です……、彼を感じたいので」
みくりがそう言いながら
彼と自分との隔たりである
柵を開くと
そのまま自分は運動場の方へと
頭絡(とうらく)も持たずに
歩いて行ってしまって
軽々しく裸馬に飛び乗ると
そのまま手綱を引いて
障害物が設置してある運動場へと
一気に駆け出していく
そのみくりの姿を見て
以前 東の遊牧民の住まう土地へ
馬の買い付けに父上と行った時の
事を思い出した
彼女の馬の捌き方は……
遊牧民の…それに 良く似ている
それもそのはず…だな
元々彼女の一族は遊牧民の中の
王の様な立場だった者が
一所に定住するようになったのが
小野寺の一族の起源だったはず
だとするのならば
馬の扱いと弓の扱いに長けているのは
通りとも言えよう
正しく…人馬一体とは
この様な状態を指す事なのだろうな
運動場に設置していた
障害物を一周して
元の位置に戻って来る
「乗馬…の腕も、相当な様だな…」
「黒曜は…、私の相棒ですから」
そう目を細めながら
みくりが黒曜の首を撫でると
それに答える様にして 黒曜が
ブルルルッと鼻を鳴らして来る