第34章 眠れぬ夜には…… お相手:煉獄杏寿郎 ※裏なし
「あんな大きな声で、歌われたら
眠気だってぶっとびますよ?師範…」
「むっ。そうか。俺の
声が大きかったのが原因か…」
ふふふとみくりが自分の口元を
押さえながら笑っていて
「でも、その姿も想像出来ちゃいますし。
師範らしい…、ですね」
「褒められている気がしないのだが、
気のせいか?」
杏寿郎のその言葉に
今度はみくりがうーんと
唸り声を上げると
杏寿郎の方へ身体を向けて来て
杏寿郎がしたようにして
トントンとその身体を
掛け布団の上から叩きながら
子守歌を手本を示すようにして
歌い始めた
子守歌を歌っている彼女と
ハタっと視線がぶつかってしまって
スッと手の平で視界を遮られて
瞼を閉じる様に促されてしまった
「今度は俺が…、寝かしつけられようと
されている様にあるが?」
「そうですよ。師範…、
良くお気付きになられましたね。
お返し…ですよ?師範」
そう言ってみくりがふんわりと
笑った 穏やかな笑顔で
「ああ、そうだ…君は
獏を知ってるか?」
「獏って、あの…
悪夢を食べるって言う、中国か
何かの架空の生き物ですよね?」
スッと杏寿郎が
みくりの額に手を添えて来て
そのまま額に掛かっている
前髪を手で上げられて
額の部分を露わにされてしまう
「師範…?」
「……みくり」
何か…温かい物が
一瞬だけ… ほんの一瞬だけ
額に触れたと思ったら
すぐに離れて……
今 私… 師範に…ッ
おでこ…に 口付けられ…たんじゃ???
自分の額をバッと自分の手で覆って
杏寿郎の方を見ると
布団の上に頬杖を付いたままで
ふっと余裕に満ちたような笑顔を浮かべて来て
こちらを見ている 彼と目が合ってしまって
「悪い夢を見なくなると言う、
まじないだそうだぞ?」
突拍子もない杏寿郎の行動に
悪い夢を見るとか見ないとか
そんな 事じゃなくって
眠れなくなってしまいそうだ…
「師範~、どうしてくれるんですか!
眠れそうにないんですけど?」
「むっ、そうなのか?
ああ、…足りなかったのだな…」
そう言って ふんわりと
穏やかな笑顔を浮かべて
「あの、師範…足りないと仰られるのは……」
「さっきのまじないの事だが?」