第33章 絶対君主のお気に入り お相手:煉獄杏寿郎 Rー15
湯殿を後にして
案内をされた先は
この後宮の丁度中央に位置する
蓮池の周囲に配置された
小さな庵の一つだった
と言うのは…
今のスルタンの先代の代までは
王妃の数は伝承に基いて10人であるのには
変わりはないが
上妃・中妃・下妃
(じょうひ・ちゅうひ・げひ)
の3つの階級に王妃は分けられていて
今のスルタンが王位を継承し
王妃を迎える際に
『俺は自分の妃達に位の
優劣は付けない』
と言い放った為にこの制度その物が廃止され
その位によって
与えられる住居となる庵の大きさに
違いがあったのだが
その階級の撤廃後は
一律の大きさの部屋と侍女を与えられている
そして……何故なのだかは
知らないが
私にその下妃の部屋を
スルタンは与えて来た
妃達に優劣をつけるのは
国に対する貢献度によるものだと
彼は昨夜言っていたが…
いや そもそも 私は
彼の妃ではないのだから
空いている部屋ではあるが
私の部屋をここに移した真意が読めない…
一番下の位の妃が使う部屋とは言えど
王妃の使う庵なのだから
それなりの大きさがあるし
それに置かれている調度品も
それなりに価値がある
ああ それなり……
そうか 可もなく不可もなくと
スルタンは私を昨日評価したが
この それなりの部屋が
今の私に相応しい…と言う意味なのだろうか?
その疑問のある程度の答えは
私に新しく与えられた部屋の
中央にどーんと配置されていた
スルタンの碁盤を見て
理解が出来たのだが
確かに この碁盤は
元々私が使っていた
侍女の部屋には置くスペースはないので
昨日……一局の続きを打つ募りが
スルタンにはあると言う事で
碁を落ち着いて打つのに
ここを用意しただけかも…と
その碁盤を撫でながら
みくりは妙に納得がついてしまった
長らく使って居なかった庵なので
空気の入れ替えの為に
少しだけ開かれていた窓から
風と共に 上等の白檀のお香の香りがして来る
ああ そうか 今日は……水の日だったか
中庭の蓮池の方からは
琴を奏でる音が聞こえて来る
この音は…スルタンの第三王妃である
菖蒲姫様の…琴の音色…