第33章 絶対君主のお気に入り お相手:煉獄杏寿郎 Rー15
そうしてる内に
一粒ずつ 手に取るのが面倒になったのか
房ごと持ち上げると
そのまま房に付いたままの
ブドウの実を食べ始めたので
その光景に驚いてしまった
いや スルタンになら許される様な
そんな贅沢な食べ方……ではあるけれど
「そう言えば…君は前に、
椿が階段から落ちかけていた時に
彼女を…抱えた侍女だった様に
俺は…記憶しているのだが、違ったか?」
「いえ、私は…たまたま
椿姫様がバランスを崩されて、階段から
身を投げ出された先に居たまででして…」
「食べないのか?」
そう声を掛けられれて
自分の手のリンゴの事だと気が付いた
「皮ごとは…ちょっと……抵抗があります」
ヒュンと何かがこちらに飛んで来て
自分の意思と反して
右手がそれを掴んでいた
手に触る感触から
果物用のナイフだと気が付いた
「ほぅ、リンゴは取り損ねかけても
ナイフはしっかりと、受け止めれるのか……」
そう言いながらも
今度はオレンジを投げて来たので
これは私に
皮を剥けと言っているのだろうけど
良く分からないが
ここの主の命令は絶対なので
私はリンゴとオレンジを食べやすい様にすると
彼の元へ差し出した
私の手から
皮を剝いて大きさを整えた
オレンジをひょいと杏寿郎が
摘まむとそのまま口に放り込んだ
果汁が指に付いたのが気になるのか
ペロリとその汁を舐め取って
視線だけをこちらに向けて来る
「して……、事の責任は
君が取る…つもりか?」
「スルタンのご意思のままに従います」
そう言って みくりが杏寿郎に
頭を下げると
「なら、決まりだな」
決まりと言うのは 何が決まったのだろうか?
明日 処刑されるとか
そんな事だろうか?と
みくりが考えていると
いつの間にか
自分の目の前に杏寿郎が立って居て
品定めでもする様な
そんな視線を……感じていると
「可もなく不可もなし……だな」
と何かについての評価を下されてしまった
可もなく
それでいて不可もない
それは一体……