第32章 地味な俺の地味じゃない彼女 村田さん
旅館の内部は
そんなに建物自体は
新しい訳じゃないけど
改装をしている様で
内装を小綺麗にしてあった
丁寧に清掃されているのが
うかがい知る事が出来て
古さを感じはしなくもないが
心地いいと好印象を受ける
薄暗い 廊下の所々に配置された
ランタンが
ぼんやりとした灯りを灯していた
香炉が置いてあるのか
ふんわりとお香の香りもする
部屋の数も10に満たない様な
小さな旅館だったが
細部にまで おもてなしの心を感じる
そんな 雰囲気のいい宿だった
「村田さん……」
廊下を歩いていると
隣を歩いていたみくりが声を掛けて来て
「ん?何…?どうかした?」
「こじんまりとした、いい所ですね…」
「あ、ああ。本当に。
そうだね、いい感じ…の所だって。
俺も、そう思ってた」
こじんまりとした……と言う
みくりの言葉の通りに
部屋の中もこじんまりとしていて
室内は8畳程度の大きさだが
2人で寝るには問題のない広さだったし
視線を上に向けると
天井が高くて 黒塗りの梁が見える
その梁も 一定の太さではなくて
原木の風合いのある 梁だった
その高さのある空間のせいか
圧迫感を感じないし…
実際の広さよりも
大きく感じさせてくれる
薄っすらと室内を照らす
間接照明は
より彼女を 美しく
それでいて艶やかに
見せていた
その横顔に見惚れてしまっていると
こちらに視線を向けた
彼女と視線が合って
ふわっとみくりが笑顔になった
「ここ、
…とても素敵な旅館ですね。
私、……気に入っちゃいました。
また…来たいです。二人で」
「たまたま、
…見つけた所だったけど。
次に来る時は……、
ゆっくりしてもいいかもね」
チュッとみくりが
村田の頬に口付けをしてきて
その行動に驚いてしまって
村田が自分の頬を押さえた