第32章 地味な俺の地味じゃない彼女 村田さん
「私は、柱にはなれません。
相応しくもありません。それに……、
継子にも、…なれません」
人形の様に美しいみくりの
造作の整った顔が
暗く曇るのが見て取れる
その鈴を鳴らすかの様か
可愛らしい声にも張りがない
本人が困っているのは
……確かだったから
「上を……見ずして、前に進めるのか?
君は。鬼殺隊として、
日々の務めを果たすのみに
邁進すると…言う訳か…?
それほどまでの才覚を…、
眠らせたままにするのは実に惜しい」
「でも、柱では……遅いんです」
そうぼそっとみくりが言った
「柱では、遅いんです。
…間に合わない…ッ柱が動くのは、
数名の隊士の犠牲が重なってからですので。
それでは、後手後手になりますから…。
それでは……、
あまりに失われる命が惜しい…。
命は…唯一無二ですから…ッ」
キュっと結んだ唇は
まるで何かに堪えるようであり
それでいて 真っすぐに射貫くような
その視線は
強い意志を感じる
そして その目に浮かぶ涙を
こぼすまいと堪える姿は
健気にも見えるが
しっかりとした 芯の
意志の強さを垣間見せる
成程 只 人形の様に美しく
愛くるしいだけの
容姿の女性では… ないか
「成程。君が…最前線が
希望だから…か。今の階級は?
甲か?もし、そうでないとするなら
君は……わざと、階級を調整してる…な?」
ジッと睨むように鋭い視線を
今度はみくりが杏寿郎に向けて来て
「…炎柱は…、私の監視でも
密命されて…おられておいで、ですか?」
そう さっきまでの
今にも折れてしまいそうな
たおやかさ…は
今の彼女にはなく
鋭い……刃物の様なそんな
むき出しの敵意を俺に向けて来るのか