第31章 年上の彼女の憂鬱 お相手:冨岡義勇
距離が遠いと
義勇から指摘された事を受けて
拳一つ分の距離がスッと詰めて
先ほどまでよりは近づくと
身体が触れる程の距離ではないが
それでも……さっきよりはぐっと近付いて
恋人同士の距離……になった
距離を詰めては……みたものの
まだ 何か 言いたそうな
そんな空気を彼は纏っていた
こんな時に 言葉で言ってくれたら
こっちとしてもわかりやすいんだけど…
「その…、すまない」
一瞬 それが……何に対する
謝罪なのか私には理解ができなくて
「え?…冨岡……、さんっ?」
「それらしい事の…、
ひとつも言えない。
何を…言えばいいのか、
正直……わからない」
途切れ途切れに彼が紡いだ言葉は
彼がずっと
気にしてきた事なのかも……知れない
恋人同士が楽しむような
そんな甘い言葉を自分が言えないのを
彼は気にしている…様だった
「でも……、お言葉ではありますが……、
私も、素直な方ではありませんことよ?
…ふふふ、似た者同士にありません事?」
「……みくり」
そう名前を呼ばれて
ジッとその瞳に見つめられる
ああ そうか
伝えたい……と思ってくれてるのか
彼は… 私に
目は口ほどに物を言う…と言うけど
その視線が 目が
言葉以上に…伝えてくれる
「だが、……女性は言葉で
言われたい物だと、そう…、聞いた……が、
みくりもそうなのか?」
「気の利いた…言葉でなくとも…、
私は……、嬉しいと思いますわよ?
冨岡さん…、違いまして?」
スッとソファの上に置いていた手に
義勇が手を重ねて来る
突然の彼からの行動に
ビクッと身体が跳ねると
「その…、嫌…か?」
嫌かと訊かれて
ドキリと胸が跳ねるのを感じる
嫌な…はずなんてないのに
「ん、いえ…嫌ではありません……が」
さっきまでの45センチの距離よりも
更に距離は近付いていて
近い…