第31章 年上の彼女の憂鬱 お相手:冨岡義勇
せめて 一刻ぐらいの猶予があれば
そのどれもがもう少しばかり
整えられたのにと
思っても始まらないけど
ある程度の用意をした段階で
彼が指定した刻限になったが
まだ彼は家には着いておらず
時間を指定しておいて
遅れるなんて珍しいと思っていたら
それから15分ほどしてから
呼び鈴が鳴った
まぁ そのお陰で
私は粗方の急ごしらえではあったが
用意が整えられたから
良かったのは良かったんだけども
ドアを開いて
彼を笑顔で出迎える
「いらっしゃい。冨岡さん。
お待ちしておりました所ですの。
丁度、お食事の用意も整いましてよ。
どうぞ、お上がりになって下さいな」
「すまない。みくり…。邪魔をする。
こんな刻限に…来てしまって。
良かっただろうか?明日に改めた方が
良かったか?返事がなかったから、
そのまま来てしまったが……」
「ええ。勿論。問題ございませんよ?
冨岡さん。それこそ…、
今更にございませんこと?」
「そうか、
…そう言って貰えると助かる。」
彼とは当然… 交際してるし
それなりの期間も経っていて
お互い成人なのだから
身体を繋いだ事だって
それこそ幾度ともあるのに
この家に泊まった事だって 何度も
そうでありながらも こうして
お伺いを立てる辺りは
何とも 冨岡さんらしい…
「あら?その手にお持ちの物は、
何ですの?
……もしかして、手土産だったり?」
義勇の手に白い箱があるのに
気が付いたその形からして
箱の中身はケーキなのだろうけど
「こんな時間に来てしまった事への詫びだ。
納めて貰いたい」
「日持ちする物でもありませんし、
今、お紅茶をお淹れしますから……
お席に座って、お待ちになってて?」
「ああ。すまない。…そうさせてもらう」
そう淡々とした口調で
表情を変えず言うと
義勇が履物を脱いで
それをキチンと整えると
いつも座っているソファに腰を降ろした