第31章 年上の彼女の憂鬱 お相手:冨岡義勇
無意識にあまり深く考えもせず
感じたままに言葉にしてしまったが
もしかして……これは
言ってはいけない
事だったのだろうか?
気分を害してしまったのか
彼からの 返事はない
それから 沈黙が続いて
何か別の話題を振った方が
良いだろうかと
そう
私が思って
違う話題を何にしようかと
迷っていた頃に
彼からの返事が返って来た
「俺も、同じ事を……感じていた」
「へ…、あ……冨…岡さんっ…」
「俺も、同じ事を…感じていたと
言った……んだが。みくりと居ると
…心地が良いと、そう…感じる」
そのやり取りがきっかけで
冨岡さんと私との
交際がスタートしたのだが
交際して一年になるが…
相変わらず 彼の言葉数は少ない
言葉が足りないなと感じる部分も多いが
足りないなりに
思っている事を 伝えようとしてくれている
その姿勢は感じるから…
それなりに 彼との関係には
満足をしている
コンコンと窓をノックする様な
音が聞こえて
ジャッっとカーテンを開くと
そこに一羽の鴉の姿があり
それが彼の冨岡さんの鎹鴉の
寛三郎であると気が付いた
ガラガラとみくりが窓を開いて
窓の向こうに居る鴉に声を掛けた
「こんばんは。良い月夜ね。
寛三郎さん。…もしかして、
冨岡さんからのお手紙を
届けに来てくれたのかしら…って
ちょっと、寛三郎さん!
こっちこっちだから」
「オオ、スマン。
みくり……ダッタカノ?
義勇カラノ、手紙ジャ…」
「いや、私はみくりですけども。
あの、それは私ではありませんので。
私は、こちらですよ?寛三郎さん」
明後日の方向に向かって
話をする寛三郎に声を掛けて
自分の部屋に引き入れると
その足に結ばれた手紙を外す
「今、お礼……お渡ししますから」
そう言って寛三郎用に用意していた
クルミに割れ目を付けて
テーブルの上に止まっている
寛三郎の前に置いた
と言うのもクルミは食べるのに
時間が掛かるからだ