第31章 年上の彼女の憂鬱 お相手:冨岡義勇
二十二…になった頃には
それも少しずつ… 変わりつつあった
ある程度の社会に
認められる物を残せて
仕事を成功させたのも理由ではあるが
大きな仕事を成功させた事で
ぽっかりと 心に穴が開いてしまった
何かをするのが 面倒になってしまって
急に 何もできない
そんな自分になってしまっていた
町を歩く 自分よりも若い
子供を連れた女性を見ると
自分がずっと 女性の社会進出が
新しい女性の幸せの形なのだと
そう思ってして来た事すらも
ぐらぐらと根底から揺らいで来て
ごくごく普通に結婚をして
家庭に入って
子供を産んで
その子供を育てるのが
当たり前の
そんな 幸せなのかも知れないと
急に 思うようになってしまった
彼と出会ったのは
そんな時だった
たまたま 会合の帰りに
夜道で拾ったのだ
傷を負って 倒れている彼を
捨て犬か何かを
拾うようにして あまり何の
考えもなく 拾って帰った
だって 落ちてたから
落ちてるなら 拾っても
誰も文句は言いはしないだろう
暗い夜道だったから
その顔を見ずに
自分の家まで持って帰ったまでは良いが
家に帰って
まぁ 大の男性を
家まで引きずって帰るのは
それなりに骨の折れる作業ではあったが
通りがかりの人が
私が酒を飲んでいるのが
分かったから
大方酔いつぶれた連れだと
判断してくれたようで
親切に肩を貸してくれたので
それは有難かった……
傷の手当をするのに
着ている物を脱がせて
驚いた
華奢に見えたが
着ている物を脱がせて
その身体を見てみると
しっかりと筋肉質な体付きをしており
泥で薄汚れていた顔を
手拭いで拭ってみれば
何と言う事だろうか…
かなりの美男子で
これは私はいい拾い物をしたと
そう喜びつつも
その閉じた瞼の奥には
どの様な色の瞳が隠れているのかと
その口からは
どんな声を発するのかと
わくわくしたのを憶えている
そう 退屈な日常に現れた
非日常な 存在だったのだ 彼は