第30章 みじかいおはなし その2 ※裏なし お相手:色々
「ねぇ、だったら。寄ってく?」
そう言ってその
甘酒を売っている
店先をみくりが指さした
するとそれまで余裕だった
不死川の顔が
明らかに余裕のない物になって
「なっ、バカっお前……、
んなとこ…、寄っかよ。仕事の前だぞ?」
「え?甘酒ぐらいいいじゃん」
「は、甘酒?」
不死川が大きな目を丸くさせて
そう問いかえして来たので
みくりがもう一度
そちらの方へ視線を向けると
その隣にあるのは
どうも 出会い茶屋だったようで
あ なるほど そっちの誘いだと
そう思ったって事ね
「それとも、
不死川君はそっちの方が良かった?
甘酒よりもその隣の方が…、
良かったって私は聞いたんだけど?」
そう言ってにやっと
みくりが笑みを浮かべた
「どっちでもいいぜェ。みくり。
お前に選ばしてやる。特別だァ。
好きな方選べェ。
甘酒でも、あっちでも……
お前の身体…温まる方法
…好きに選ばしてやるよ。どうすんだ?」
不死川の言葉に
今度はみくりが目を丸くさせて
「私の身体…を温める?」
「さっき、手ェ当たっただろうがよ。
あんな冷てぇ手、してんじゃねぇよ。
肝心な時に、手、
動かねぇじゃ済まねぇぞ?
で、どうすんだァ。
お前の希望はどっちなんだよ?」
手を温めれらたら
私はそれで いいんだけど
どうにも 両極端な選択肢な様な気がする
「じゃあ…、さ。そこに入れてもらう
って言うのは、ダメ……かな?不死川君」
そこ と言われて
どこ?と聞きたそうな
顔をしている不死川の
両手を突っ込んでいる
隊服のポケットの辺りを
みくりが指さした
「そこって、俺のポケットの事かァ?」
「う、うん。それは…ダメ?」
プイっとそっぽ向いてしまったら
そのまま断れれるのかと思っていたら
そっぽを向いたまま
左手をこっちへ差し出して来て
「貸せ」
「へ?」
「ぼさっとしてんじゃねェ。
手、貸せつってんだよ。バカ」
急かすようにしてそう言われて
差し出された不死川の左手に
自分の右手を重ねると
そのままギュッとその手を握らて
不死川のポケットに導かれる