第30章 みじかいおはなし その2 ※裏なし お相手:色々
大通りを歩く人の服装も
コートを羽織った人の姿が多くなり
つい一週間ほど前までは
まだ夏の装いの人の姿の方が多かったのに
一気に夏から季節が
秋を大きく通り越して
もう冬の入口の気配まで感じられる様な
そんな気温になっていた
「でね、その時の村田くんがね……」
「ああ」
私の隣を歩いている
不死川君と不意に伸ばした手が
ピトッと 触れてしまって
慌ててその手を引っ込めた
「ご、ごめん…、
私の、手、冷たかったでしょ?」
「あ、ああ。
いや……どうってことねぇよ。
当たったぐらいで、謝んじゃねェ」
「不死川君は…、手。温かかいんだね」
「はぁ?んなこったァ、
どうでもいいだろうがよ?
俺の手が、どうだろうがよ」
そんなやり取りをして
それから 何もなかったかのように
また通りを歩き出して
あれ?
心なしか さっきまでよりも
身体一つ分 位
距離…近くなったような?
気のせい…かな?
「んで、その村田ってぇのの、
話……、どうなったんだよ?」
「あ、ああ。その話の続きね。
それでね、その村田くんがね……」
私の話を聞いているのか
それでいて聞いていないのか
分からないような
そんな感じだったのに
聞いてたのか 不死川君
途切れていた話の続きを
不死川に促されてしまった
「ああ……、で…」
自分からその続きと催促した
割には あまり興味がなさそうな
そんな 生返事の様にも取れる様な
そんな相槌ばかり返して来る
「ちょっと、…不死川君……
私の話聞いてるの?」
「あ、ああ…」
ほら また 聞いてるようで
聞いてない返事
それに… どこ観てるんだろ
さっきから
不死川君の視線が
どこかへ向いているのに
気が付いて みくりが
その視線を先を辿ると
とある店の店先で
甘酒を売っていて
数人の人が温かい甘酒で
冷えた体を温めていた
もしかして…甘酒
飲みたかったのかな?