第120章 夫婦でおもてなしをしよう! 後編 お相手:煉獄杏寿郎現パロ
「いえ…俺は…この道は…
まだまだです…ので。
俺の酒造りは…まだ、始まったばかり。
スタートラインすら、立ってるのかも
怪しいぐらいですから…」
そう言って伏し目がちになる
健太郎の表情に思わず
自分の中の記憶にある彼が
見せた事のないその表情に
ドキッといてしまって
見間違いかと2度見してしまって居たけど
そうか…辺も 健太郎も…
色んな事…考えたり悩んだりとか
順風満帆に自分のエリアを
広げて拡大してる訳でも無さそうで
でも…今までは どことなく
のらりくらりとして
どことなく自分の事も
他人事みたいな…ふわふわしてたけど
彼がしっかりと…地に足をつけたのは
「健太郎、ここに居たの
まだ、あっちに居るのかと…」
「千咲っ、あっち…頼んで良いか?
ひまり…こっち貸してくれ」
健太郎の元に千咲が駆け寄って来て
その腕の中では小さな寝息が聞こえていて
千咲の方に健太郎が手を広げると
千咲が抱いていたその子を
健太郎の腕に抱かせて
よいしょと体勢を整えて
健太郎が自分の腕にその子を抱き直すと
杏寿郎とみくりも方へ向き直って来て
視線だけで千咲がこっちから
ある程度の距離が離れたのを確認して
一度視線を自分の腕の中にある
娘の方に向けると ゆっくりと口を開いた
「ひまり…の事もあるし、
安定した…それなりの物を
造るようにしても良いなって。
そんな風に考えてた時に、妻が…、
千咲が言ってくれたんです。
渡辺酒造の跡取りがそれじゃダメだって…
健太郎先輩がやりたかった事、
ちゃんとやって下さいって」
「良く出来たいい奥さんを貰ったな、君は」
「俺がここまで来れたのも、
千咲のお陰なんで、…俺が…
この先も…酒造り…して行けるのは…。
アイツのお陰でしか無いんで…。
って。また…俺は…
自分の事ばっかり…話してるな…」
言いたかったことは
これじゃなかったと言いたげに
ブンブンと健太郎が頭を左右に振ると
「成瀬さんと、西井から聞いてる。
こっちに家建てて、引っ越して来るんだろ?
また、その時は教えてくれ…ないか?
その時は樽酒…サービスしてやるよ」
「樽酒で鏡開きか…、ふむ。
だったら渡辺君、来月の月末にでも
一つ…届けてもらいたいんだがな。
祝い酒を盛大にふるまうのも悪くない」
「それ、私。折角のお祝いの
お酒っ、飲めないし」