第117章 2回目のハネムーンは… 後編 お相手:煉獄杏寿郎現パロ
一緒に戦った仲間達の死を…
その名前を…顔を…その仲間との記憶を
自分の中に遺して置きたいと…言っていたか
彼女が…書き記した…手記には…
確かに…生きていた…俺達の
仲間達の…記録が…残っていた…か…
父上は…そんな物を残して何になると
そんな無駄な事をしても…
死んだ者は帰らないと
彼女を侮蔑したが…
自分の事を…どれだけ悪く言われても
感情を荒げる事のない彼女が…
これは…そんな物なんかじゃないと
あの父上に対して声を荒げたのを憶えている
「みくりっ、もしかして…
君は…そこに生きていた彼女達を、
記憶しようとしてないか?」
そう言えばさっき…奥さんは
自分に出来る事は
知る事と向き合う事と忘れない事と言っていたか
展示を見て居たら
杏寿郎に突然後ろから
ぎゅううと抱きしめられてしまって
「もう…いいんだ…、みくり」
耳元で杏寿郎の声がして
その杏寿郎の手で目を覆われてしまう
「杏寿郎…、そうされたら…見えないよ?」
奥さんの目を塞いだ手に
湿った感覚が伝わって来るから
奥さんは…犠牲者の227人ではなく
その中の1人1人と見ていたのだろう
「この…現実があった事…だけを、
憶えて居ればいい…、奥さんがそれでも
何度でもここに足を運んで…、
全員の顔を憶えたいと言うなら…
定年後でもよければ、俺は、付き合うがな?」
「流石に…それは…私もしないよ…
戦争だけじゃなくて、大きな事故とか
自然災害でも…多くの人の
尊い命が…失われてるんだもの…。
私、一人が…全部記憶に遺せる範囲じゃないって
そんな事位は…私にだって…わかってるよ」
次行こうかとみくりから
こっちに声を掛けて来て
次の第五展示室は 回想と掲げられている
ここを訪れた人が…自分の想いを
書き記す事が出来る空間になって居て
誰かが書いた…想いを閲覧する事も出来て
自分の想いを…ここに遺す事も出来る
数か所のブースには
自分の想いを綴っている人の姿もあって
奥さんは…あの時の自分がしていた事を
この場所に来て思い出したのか…
ハッとした表情をしていて
「ねぇ、杏寿郎…」
「書いて来ていいぞ?俺も
どこかが空いたら書くからな」
書きたい事が沢山ありそうな
奥さんに…先に書くように促して
俺はどこかが空くのをベンチで待つ事にした