第112章 九州に行ってきました!その3 お相手:煉獄杏寿郎現パロ
よろめいた御婦人を助ける為に
蜜璃の手から離れたあんパンは
門司港駅の構内を
綺麗な弧を描きながら飛んで
ぽす……っと そのあんパンが
杏寿郎の顔面にクリーンヒットして
ズルズルと顔の表面を滑って行くと
そのあんパンが顔から落ちる前に
杏寿郎が自分の手で受け取って
ばりっ…とその袋を破ると
中のあんパンを取り出して
そのお上品なサイズのあんパンを
3口ほど…で平らげてしまって
もぐもぐと咀嚼すると
ごくん…と喉を鳴らして嚥下して
「美味いあんパンだったな…」
「当然だ…、そうでなければ、
俺が、買うはずがないだろう。
あの店はイチゴの菓子以外にも。
あんパンが有名だからな。調べ済だ」
「だが、確かに美味いあんパンだったな。
このあんパンなら、10個でも
余裕で食べられそうだ」
そんなやり取りを伊黒としていると
じっとこちらを見つめている
みくりの姿があって
「杏寿郎さん…、あの時の…
あのお弁当は…、美味しかったですね」
そのいつもの口調と違う口調で
穏やかな表情を浮かべながら
みくりがこちらを見つめて来て
このレトロな雰囲気の中で見ると
あの頃の彼女の面影が
今の彼女の姿に重なって見えて
「杏寿郎さん…、
ありがとう…ございます」
そう言いながら みくりが
自分の膨らんでいるお腹を
愛おしそうに…よしよしと撫でる
そうして…穏やかな笑みを…
みくりが浮かべて…
いつものみくりが見せる事のない
その仕草と表情に…
今の俺が…見ているのは…
あの時のみくりだと…
そして…彼女の憂いは晴れたのだと
その笑顔から…杏寿郎には理解する事が出来て
しんみりとしながら感傷に浸っていると
「すっ、すいません…、煉獄さん。
そこまで…お腹がお空きだと…知らずッ」
今から昼食だと言っているのに
あんパンを食べていた杏寿郎に
月城が申し訳なさそうにそう言って来て
予め コースを月城さんが
予約してくれていた様で
駅舎の2階にあるレストランで
窓からレトロな街並みを楽しみながら
ミシュラン2つ星のシェフが
料理の監修をしている
門司港名物の焼きカレーが食べられる
ランチのコースを頂いた
※注意※
こちらのレストランは
2023年1月30日を
持って閉店しております