第23章 惣菜屋さんの筑前煮 後編 お相手:煉獄杏寿郎
「あの息子が、一度言い出したんだ。
言い出した事を、変える事は
ないだろう。これでも、アイツの…
杏寿郎の父親なんてしているんだ。
自分の息子が…、どんな人間かは
これでも、少なからずには
理解しているつもりだ…。
俺の所為で…、杏寿郎にも
千寿郎にも辛い思いをさせてしまった」
「ち…、父上っ…」
「無論。杏寿郎だけでなく、
…千寿郎も俺の息子だ。
みくりさん、こうだと決めたら、
融通が利かない息子だが…、
世話をしてやってくれまいか?」
ガラガラと店の戸が開いて
開かれた戸口から もうひとつ
同じ様な獅子のたてがみの様な
頭が見えて
「兄上っ!!」
誰よりも早く千寿郎が
それに気が付いて
玄関へと向かって駆け出すと
「兄上っ、お帰りなさいませ!
お戻りになられたのですね?」
「ああ。今戻ったぞ、千寿郎っと。
ん?ここは家では…。
何故千寿郎がここに?」
自分に飛びついて来た弟の身体を
抱きとめつつもその頭を撫でながら
杏寿郎が首を傾げた
「お戻りでしたのですね。杏寿郎さん。
お帰りなさいませ。
お帰りをお待ちしておりました」
「ああ。みくりさん。
貴方に俺の帰りを、お待ち頂けるなど…
俺は幸せ者だと言う物だ…。
杏寿郎、ただいま戻り…っと
父上?どうして、父上が…こちらに?」
仕事から戻って
自宅へ戻る前にとこっちへ来てはみたが
何故か父上と千寿郎がここに居て
それも客として居るのではなくて
仏間になっている和室へ上がり込んでいて
お茶を飲んでいるだけでなくて
随分と話し込んでいた様な
そんな形跡すらあり…
「それは…もしや…、手紙で書かれていた
さつまいもの入った、筑前煮では?」
「ええ。そうなのですが…その」
用意してお待ちしておりますと
杏寿郎さんから届いたお手紙の
お返事に書いていた
さつまいもの入った筑前煮を
自分が食べるよりも先に
自分の父と弟に私が出したので…
どうやら 私のした行動は
彼の機嫌を損ねてしまったようで…