第109章 ねぇ、ねぇ。ねーぇ? お相手:時透無一郎 R-15程度
彼が言うに…はの話
普段は話を聞いても忘れちゃうし
人の名前もろくに憶えられない自分が
何故か私の事だけは
忘れないでちゃんと憶えて居られる事
何かを食べても味を余り感じないのに
私のおにぎりは何故か味を感じて
また食べたいって思った事
誰かと一緒に何かを食べるのが
美味しい…んだって
そんな風に感じた事…は
自分にとっては初めてなのに
どこか懐かしい様な
そんな特別な経験なんだって
そんな風に話を…してくれた
だから…自分は
そんな感情を自分に与えてくれる
私が…好きなんだと思う…んだって
好きって言う感情も
自分の中では曖昧な物だから
好きなんだと思う…と
無一郎はいつも言うんだって
彼のちょっと変わった雰囲気と言うか
常識が欠如してる様な
感情が欠落してる様な
そんなどこか無機質なそんな
冷ややかなイメージを彼から感じるが
ぽつり…ぽつり…と言葉を紡ぐ彼は
年相応な14歳の…
只の恋愛に不慣れなだけの
男の子にも…見えるから…なのか
そんな…風に…こっちが…彼を
無一郎を求めてるって事が
普通の恋人同士がする事をしたいって
そんな風に…思ってるから
好きなんだと思うと…言う彼が
いつの間にか…それを
好きだって言い切れる前に
私が彼を…好きになっちゃってるから…
そうなってしまってるから…
こんなにも……
そう こんなにも…
自分の感情の行き場がなくて…苦しい…って
そんな風に…こっちが感じてるって言う
そんな感情も…
無一郎にぶつけてしまいたくなってる
「…ねぇ、みくり」
無一郎の手の指先が
こっちの目元をなぞって来て
自分が…泣いてたんだって気が付いた
「僕の所為…、なんだよね?
みくりが、そんな顔をしてるのも、
こうして…、涙を流すのも…全部…。
だったらさ…、いいよ。
全部…、みくりの好きにしていいよ…?」
ふるふるとみくりが
自分の首を左右に振った
「そうじゃ…ない…の…ッ、
それじゃ…、ダメ…なの…。
そんなんじゃ…、何の意味も無い…のッ」
自分の想いを募らせる度に
私が彼を好きになる度に
自分と彼との気持ちの想いの差に
私と無一郎は
すれ違うだけしか出来ないから…ッ
だったら…いっそのこと…
もう…