第109章 ねぇ、ねぇ。ねーぇ? お相手:時透無一郎 R-15程度
「さぁ?私の記憶にはありませんが」
『嘘、会った事…あるよ…。
その顔…、見た事ある…気がする
でも、なんでだろう?どうして…
憶えてるんだろう?でも…名前知らないや…』
そのままこっちの顔をじっと見て
その整った顔に見つめられると
どうせ私の顔なんて十人並みだから
まじまじと見つめるほどの物なんてない
「私の記憶が確かなら、
貴方は…時透無一郎と名乗った気がします」
そのみくりの返事に
ムッと無一郎が顔を顰める
美形は顔を顰めて
嫌そうな顔しても美形なんだなと
その機嫌の悪そうな顔を見て思って居たら
「おにぎり、おにぎりだ…そうでしょ?」
「私は、おにぎりではありませんよ?」
「だって、名前…知らないから。
知ってるのは、おにぎりをくれた鈍間ってだけ」
嫌味を言われているのかと思ったが
どうもそうでも無いらしい
彼の言い方を聞いていると
嫌味で言っていると言うよりは
感じたままに言葉にしてるのか…な?
どっちにしろ友達は出来なそうだけど…
「おにぎりの名前……」
「あのおにぎりは…鮭と梅ですよ」
私はおにぎりでは無いので
あの時のおにぎりの具を答えて置いた
「僕は…教えたでしょ?名前…
どうせ僕が、どんな話を
聞いたとしても憶えてないから?
おにぎりの名前は、教えないって事?」
この時透無一郎と言う隊士の言う
どんな話をしても憶えていないと言うのが
どう言う意味なのかと言うのは
私にはちっとも話が見えて来ないけど
どうせ記憶に残らないのなら
教えても同じかと思って
名前を教えたのが…今思えば
私の命運を分けたのかも知れない
「みくり」
「みくり?」
その大きな目をそう復唱しながら
ぱちぱちと無一郎が瞬かせていて
「そうです、それが私の名前ですので。
私は、おにぎりではありませんから」
「ねぇ、みくり」
名前を教えたまでは良いが
イキナリ名前を呼び捨てにされてしまって
「何でしょうか?時透さん」
「みくりのおにぎり…、
また、食べたいんだけど。食べさせて?」
「今は…無理じゃないですか?」
「どうして?」
「だって…、今、食事中ですよ?」
「なら、いつなら良いの?」
「いつと言われても…次に会った時にでも」
「なら、次に会った時…だね、分かった」