第109章 ねぇ、ねぇ。ねーぇ? お相手:時透無一郎 R-15程度
ある日
私は彼に聞いてみた
「ねぇ、無一郎君」
「何?みくり」
「私と無一郎君ってさ…恋人同士…だよね?」
事のきっかけは… 5か月ほど前の任務だ
私が鎹鴉から指令を受け取って
向かった任務…だったのに
私が現場に到着した時には…
全て終わった後だった
『……今頃、来たの?
もしかして鈍間?』
明らかに自分より年下の
身長だってそう変わらない
その声を聞くまでは
美少女だと見まごう程の美形さんに
開口一番 鈍間と言われてしまった
その時は…私は別の任務で
鬼を斬った直後に
その任務の場所の距離が近いからって
そんな理由で指令が下ったと言うのに
少しぐらい…
自分の体調を整える時間ぐらいは
こっちだって命がけで戦ってるんだから
と文句の一つも言いたかったが
鬼を斬ったのがこの一見すると
美少女にしか見えない
少年の隊士なのなら…
お礼のひとつでも言うべきなのか
お詫びの一つでも言うべきなのかと
みくりが考えていると
ぐぅううううううっとひとつ
その辺りの静寂を塗り替えるほどの
大きな腹の虫が鳴いた
じっと…自分の向かい側の
その美少女にしか見えない隊士が
こっちの顔を見て居たが
「鳴ったのは、私の腹じゃなくて、貴方のよ?
もしかして、お腹…空いてるの?貴方」
『お腹…空いてる?僕が?』
はぁ…とみくりが
自分の懐から藤の花の家の人に
台所を借りて握ったおにぎりの包みを出すと
その隊士の手を取って
その手におにぎりを握らせる
『何これ?』
「何っておにぎり、
貴方、おにぎりも知らないの?」
『無一郎』
「は?…」
『僕は…、貴方じゃなくて、
無一郎…。時透無一郎』
「あそ…、もう…済んでるんだったら
私は、別の任務に向かうから。
それ、食べたらいいからね。あげるから」
と言う…ちょっと変わった
隊士とのやり取りがあった事なんて
すっかり忘れていた…
その出来事からひと月が経った頃
偶々…昼ご飯を食べるのに立ち寄った店で
偶然にも…席が一杯で
相席する事になったのが…
その風変りな隊士事…
時透無一郎だった
『ねぇ、もしかして……どこかで会った?』
向かい側に座っている彼は
不思議そうな顔をしながら問いかけて来て
会ったも何も…
私に鈍間って言ったじゃない?