第23章 惣菜屋さんの筑前煮 後編 お相手:煉獄杏寿郎
そう言ってみくりが立ち上がり
お茶受けにと 自家製の漬物と
それから深めの大皿に乗った
筑前煮をちゃぶ台に置いた
「こちらの筑前煮には、
さつまいもが入っっているのですね。
美味しそうです」
取り皿に筑前煮を取り分けると
槇寿郎と千寿郎の
それぞれの前にみくりが置いた
「ええ。そうなの。お口に合うと
いいのだけど…、どうぞ?」
「はい。頂きます」
みくりにそう言って千寿郎が
出された筑前煮を食べ始めた
「わぁ、これも美味しいです」
「そう?そう言ってもらえて
安心したわ。ありがとう」
が その一方で
自分の前に置かれている
取り皿に取り分けられた
筑前煮を槇寿郎が眺めていて
手を付ける 様子が無かったので
「父上、あの…。
お召し上がりになられないのですか?」
千寿郎がその様子を見て
恐る恐るに槇寿郎に声を掛けた
「いや、さつまいもは杏寿郎の
好物だったなと思ってな…、頂こう」
「さつまいもが入っていますので。
いつも店に置いている筑前煮とは
味が変わってしまいますし。
どうしても甘くなってしまうので…」
槇寿郎がさつまいもの入った
筑前煮を口に運ぶのを
みくりが見守っていて
一口 それを口に運ぶと…
目頭を押さえて
俯いてしまったので
「槇寿郎様?如何なさいました?
すいません、ご無理を言いまして。
お口に合いませんでしたのなら、
ご遠慮なく吐き出してい頂いても…」
みくりが槇寿郎のその様子を見て
そう声を掛けると
そうではないと言いたげに
口元を押さえたままで
槇寿郎が手を振って
そのまま それをゴクンと飲み込むと
「すまなかった、
お見苦しい所をお見せした様だ。
…思い出して、しまったんだ。
初めて…あの時、貴方の父上が作った
筑前煮を食べた時の記憶を…」
「槇寿郎…様っ…、でもこれは
父の味を再現したのではなくて…、
私が…自分で作った物でして…」