第23章 惣菜屋さんの筑前煮 後編 お相手:煉獄杏寿郎
「すいません。頂きます」
2人に見守れらながら
筑前煮を口に運ぶと
衝撃を憶えた
「これは…、うまい、うまいな…」
その筑前煮は
酷く空腹だったからなのかも知れないが
今までで食べた
どの筑前煮よりも
どんな 高級な料理よりも
美味しいと…そう感じたんだ
「美味しい?」
「ああ。美味い」
思わず 我を忘れて
次々に筑前煮を平らげて行くのを
にこっとその小さな女の子が
笑顔になって見ていて
「でしょ?とーとの筑前煮は日本一だもん」
「こら、みくり。
日本一なんて言いすぎだぞ?」
ふふふふと口元を押さえて
みくりと呼ばれた女の子が笑って
そう褒められた父親が女の子の頭を
よしよしと撫でた
「沢山食べてね?」
あまりの美味しさにあっという間に
おにぎりと筑前煮を平らげてしまって
「馳走になってしまい、すいませんでした…。
しかしながら、助かった。
何とお礼を申し上げたらいいのやら」
「お気になさらず…、さあ。みくり行こう…」
小さな女の子の手を引いて
そのまま男性は立ち去ろうとする
「お待ち願いたい。
せめて…、お名前をお聞きしたい。」
「わざわざ名乗るほどでも、
ありませんよ。私は、駒沢で
惣菜屋を営んでいる者ですよ。それでは」
「…ーーーと言う事があったんだが…」
「そうだったのですね。
私は記憶にありませんで」
槇寿郎の記憶には
その時のみくりの様子も残っていたが
当のみくりの方は記憶にない様だった
「それは、みくりさんが
お気になさる事ではない、
まだ幼くてあられたのだから、
当然の事」
「ああ。そうだ…もし良ろしければ。
期間限定の筑前煮でも如何です?」
そう何かを思い立ったかのように
みくりがそう提案してくる
「期間限定の物があるのですか?」
期間限定と言われて
千寿郎がそう返すと
「ええ、まだ、試作品ではあるのですが。
お店で、出そうかと…。ご準備しますので、
しばらくお待ちくださいましね?」