第23章 惣菜屋さんの筑前煮 後編 お相手:煉獄杏寿郎
「あれはまだ…、俺が鬼殺隊に入隊し
炎柱となる少し前の事…。
かれこれ…何年ほど前になるか…」
「まだ私が、幼い頃…の事でしたら
…23、4年ほど前…?でしょうか?」
自分の年齢から推測すれば
私の記憶に残らない位なのだから
きっと
それ位の時の話なのではないかと
みくりが確認を取る様にして
槇寿郎に尋ねた
「もうそんなにも昔だったか…。
通りで歳を取ってもいるはずだ…」
そう言ってふうっとため息を漏らした
「あの時俺は、任務の帰りで…
疲労と空腹で今にも
意識を失いかけていた…。
たまたま時間も早朝で、
店らしい店もやってない。
しかし、家に帰るにはまだ距離があり…。
お話するのも、
恥ずかしいような事だった故に。
あの場で、話をするに至らず
…申し訳なかった。
言葉らしい言葉もなしに、
貴方に、気を悪くさせて…しまったかと」
そう言って 決まりが悪そうにして
苦笑いを浮かべる
「いえ、決してその様な事は…。
あの時はとにかく、
私も緊張しておりましたし。…あっ」
早朝と言われて
みくりがある事を思い出した
幼い頃
毎朝父は魚の仕入れに
魚市場へ行っていた
私も何度もそれに同行したのを憶えていた
ここからそれなりに距離があって
店らしい店もないのなら…
「あの、槇寿郎様…。
思い出した事なのですが。
それは、もしや、
下井黒井の辺り…でしょうか?」
あの辺りなら 仕入れた鮮度のいい魚を
売る商店と漁に出るための道具をしまう
倉庫群が並んでいる辺りで
飲食店らしいものはないから
もしかするとと
思って確認を取ると
「ええ。その辺りだったか。その辺りで
置いてある修理中の船に
持たれて休んでいた時に
貴方のお父上に声を掛けられまして」
槇寿郎が目を細めて
その時の事を 思い返す
極度の 空腹と疲労
ここで休息した所で疲労は回復するだろうが
どうにも 空腹は満たせそうにないか…
そう 槇寿郎が思って居た時
声が 上から降って来た