第23章 惣菜屋さんの筑前煮 後編 お相手:煉獄杏寿郎
その白い ふわふわとした物に
そうみくりが問いかけて
お伺いを立てると
「もし…貴方が
幸せを運んでくれるのなら…。
私の所に…、幸せを…、
運んで来てくれる?」
白いふわふわした物に口はないのだから
私の言葉に返事は返しては来ないが
その 手の平の上にあった
居た と言うべきなのか
それは キラキラとした光になって
みくりの手の平に吸い込まれて行った
「消えた…?ううん、吸い込まれた?
今のって、…でも、まさか…ねぇ?」
自分の願いを聞き入れて
くれたとか…とも考えもしたが
そんな物にも
頼りたい気持ちもありつつ
そんな事は
バカバカしいとも思いつつ
仕事が忙しくて
幻でも見たのだと
みくりは自分に言い聞かせて
ぶんぶんと首を振った
あれは 幻 そう幻…なのだから
「今は、仕事…、よそ事を考えてる
場合じゃないもの」
実は… あれからと言う物
私の日常は
少しばかり 変わりつつあった
その理由と言うのは…
新しい常連のお客さんが出来たと言う事
ガラガラと店の戸が開いて
いつもの あの目立つ
獅子のたてがみの様な頭が二つ
店に中に入って来るのが見えた
「いらっしゃいませ。槇寿郎様、千寿郎君」
「すまない…、お邪魔する」
「こんにちは。みくりさん…、今は
お忙しいお時間でしたでしょうか?」
店は丁度 混雑する時間を過ぎていたから
「いいえ。今は…丁度空いている
時間ですので…。
お急ぎでなければどうぞ?」
そう言ってみくりが
槇寿郎と千寿郎に店の奥の和室へ
上がる様に促した
「いや、その様なお気遣いは結構。
俺は…、客として
いつものを買いに来たまでで…」
「いつものは、ちゃんとご用意が
してありますので。
お時間がお許し頂けるのなら…丁度
頂きもののお茶の葉がありますので…
お茶でも飲んで行って頂けませんか?」
「父上。みくりさんの
お言葉に甘えられては…?」
「では、少しだけ…。
お邪魔させて頂く」
「はい、どうぞ。
いつもながらに狭くて古いですが」