第23章 惣菜屋さんの筑前煮 後編 お相手:煉獄杏寿郎
彼の杏寿郎さんの父親との
顔合わせをしてから
更に 二月が経って
季節は秋から 冬へと
装いを変えて行っていた
通りの歩く人達も
厚めのコートやマントに身を包んでいる
冬は花が少ないから淋しいと
私が漏らしたら
杏寿郎さんが
ポインセチアの鉢植えを
買って来てくれたので
店の中に飾っている
ポインセチアかもう12月だもんね…
お正月にはおせちの
注文受けているから
私のとっては 一年の中でも
忙しい月ではあるのだが
師走なだけに
普段の仕事の合間に
日持ちする物から
おせちに使う
黒豆やタラの干物や
昆布…干し椎茸などの仕入れを
平行して行かなくてはならず…
おせち来年もお願いねと
お客さんに期待されてしまっては
忙しくもあるが 嬉しい悲鳴でもある
杏寿郎さんは 私に家に
入って欲しいと迎えたいのだと
そう何度も言ってくれては居るのだが
私は 何かに理由を付けては
それを断り続けていた
店を続けたい…と言うのが
表向きの理由で
私の本心でもある…のだが
子供でも 身籠ってしまえば
一層の事
諦めでもつくのかも知れないが
そうしている…にも関わらず…
私は 身籠っては依然おらず
杏寿郎さんはああは言っていた…が
私は 本当に石女なのかも知れないと
ふぅっとみくりがため息を漏らした
ふわっと視界の端を
白い何かが舞う様にして飛んだのが
みくりの目に見えて…
顔を上げるも
それはどこかへ飛んで行ったのか
消えてしまったと思って居たら
ふわっ ふわっと
ゆっくりとした動きで
私の前に舞い降りて来て
手の平を広げた その上に降りて来た
白いふわふわとしたそれに目はないが
なぜだか 私は
その白い物が こちらを見ている
そんな 気がして…
幸せを運ぶのだと…
トキ叔母さんが言っていたけど
「お願い事…を
してもいいのかしら?貴方に…」