第103章 ある夫婦の3月のお話 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
「白ご飯か?米だったら全部
今、ここでチャーハンになってるぞ?」
「え?そうなの?これ…見たら
多分、杏寿郎、白ご飯欲しくなるよ?
これが、出たら、春って感じするよね?
確か、今日が5日でしょ?
今年の漁の解禁が、4日だったから」
瀬戸内の春を告げる
イカナゴのシンコ(稚魚)の漁が
昨日解禁になったばかりだと
みくりが言って来て
イカナゴは不漁がこの数年続いていて
この季節のスーパーにも
別の冷蔵棚を置いてまで
大量のイカナゴのシンコとくぎ煮が
この時期になると並ぶものだったが
この数年は数日で漁も終了してしまう程の
イカナゴのシンコの不漁が続いていて
昔はこの時期になると
あちこちから京都の亀岡の家にも
イカナゴのくぎ煮が大量に届いていた物だったが
すっかりこの春の習慣も
縁遠い物になってしまって居て
「あの中条の、おばあさんが
作った、イカナゴのくぎ煮か?」
「そうだよ。杏寿郎は
イカナゴのくぎ煮好きだった?
白ご飯が無限に食べられるよ?」
みくりのおばあさんは
料理上手だとみくりが言うだけあって
黒豆を煮るのも上手いし美味い
イカナゴのくぎ煮も期待して良さそうだ
中に手紙があったらしく
みくりがそれを読んでいて
「また、6月になったら
山椒の実、煮た奴送ってくれるってさ」
「山椒の実か…いいな
あの味と香りが…な、奥さんは
苦手だったんじゃなかったか?山椒」
「そうだよ、でもしばらくは
イカナゴのくぎ煮で白ご飯が捗るね。
明日のお弁当はおにぎりにしようか?
イカナゴのくぎ煮のおにぎり」
こちらの顔を見ながら
固まっている杏寿郎と目が合って
「だからッ…、どうして君は
毎度毎度、今、すぐに
食べられない物の話をするんだ?」
「えぇっ、いや、明日の
お弁当にそのまま入れてもいいけど
おにぎりにしたら美味しいよなぁって。
あぁんっ、もう!そんな目して見ないでよ。
今、握るからっ、おにぎり。
それでいいでしょ?チャーハンは明日の朝に
ちょっと残しとけば、いいじゃん…それで」
俺がおにぎりを食べたそうな顔を
していたからなのか
みくりがそう言って来て
キッチンの方へ来ると
レンジでチンするご飯を取り出して
電子レンジの時間を設定して
スタートボタンを押す
「おにぎりさ…」