第103章 ある夫婦の3月のお話 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
杏寿郎がその言葉への
返事を返さなかった事に
槇寿郎は構う様子もなく
車の窓の外を眺めながら
更に言葉を続けて来る
「…瑠火が居て…、お前が居て…、
千寿郎が居るからな…、今の俺には」
槇寿郎の言葉に杏寿郎は耳を傾けていた
あの頃の…あの時代を生きていた
父さんに… いや 父上には
無かった物が…今の父さんにはあって
そして…それは俺も同じ事なんだな…と
「父さん」
「何だ?杏寿郎…」
「父親になるって知った時、
父さんはさどんな気持ちだった?
やっぱり…怒られたりとかした?
その…、母さんに…」
窓の外を見ていた視線を
槇寿郎がこちらに向けて来て
「そうですよ、杏寿郎。
まだ性別がどちらかもわからない内から。
ベビー服を買って来たりして、
いつ、産まれるかも把握してないから
季節が違ったら使えないと、
私がお店まで付き添って、
謝りに行った事がありましたよ」
杏寿郎と槇寿郎後ろに座っていた瑠火が
そう当時の槇寿郎の様子を話して来て
あの普段の父さんからは
想像がつきにくい感じの所業を
母さんのその言葉から知る事が出来たのだが
ベビー服…はいつ買いに行くんだと
俺がみくりに聞いた時には
性別は5月ぐらいにならないと
確定しないからそれまでは買わないと
バッサリと拒否されてしまったんだが
その話を聞くに…血は争えないと
杏寿郎は内心考えていた
みくりは6月に自分の父親と
買い物を一緒にしに行くと言っていたので
性別も確定してるし
父の日も6月だからそのつもりなのだろう
里帰りするつもりだから
そのまま買った物は中条の家に
郵送して貰うつもりなのかも知れない
「赤ちゃんの…と言えば、ね。
ベビーベッドとかね、バウンサーをね。
出産のお祝いに、プレゼントするよって」
「そんな物を普通に、出産祝いに
プレゼントするのは親以外なら…。
俺には、あの人しか思いつかないんだが?」
「あ~あ、一成君?昔から、
一成君は、みくりに家具とか
プレゼントするの趣味だもんねぇ~。
いいじゃんいいじゃん、貰えるなら
貰っとけばいいわよ。一成君が、
あんたにくれるって言ってるんだもの」
割とみくりのお義母さんは
その辺りがライトな感覚なので
関西人だからなのか
貰える物は貰っとけと言う思想なんだろうな