第5章 君の名前を お相手:不死川実弥
「ねぇ、大丈夫?不死川君。
痛かった?麻酔足そうか?」
不死川の額に浮いていた汗を
みくりがガーゼで拭きながら
そう声を掛けた
「みくり……」
「どうしたの?不死川君…もうちょっとで
終わるから、待っててね」
そう言ってる間に 傷の縫合は済んで
新しいガーゼを傷に当てられ
テープで固定された
「はい、終わったよ。不死川君」
ポンポンと新しいガーゼの上を
みくりが軽く叩いた
「世話なっちまって、悪ぃな」
「いいよ、また抜糸は、
自分でしないで来てくれると嬉しいけど?」
と軽い嫌味を言われてしまった
「みくり」
名前を呼ばれて 突然 口を口で塞がれる
「し、不死川…くんっ、今日は…」
「あん?今日は…いねぇんだろ?」
そうだ 今日はこの屋敷の主である
しのぶは仕事で家を空けている
チュッ クチュ
舌を絡める唾液の音が耳につく
不死川君とは 何度か
そう言う事をしたことがあるが…
ここでは 周りの目もあるし…した事はない
彼と私は 恋人ではない
そうではないけど 体の関係はある
だからと言って 体だけなのかと言うと
正直……そうでもない気がする
それは私の思い違いなのか
不死川君の 口付けは
普段のあのぶっきらぼうな口調からは
想像も付かないほど 優しい……
こんなに優しくしてもらうと
こっちが戸惑ってしまうほどに
彼の口付けは優しいのだ
それは 彼の人柄を 表してるかのようで
深い口付けの合間に落とす
瞼や頬にする軽い口付けも
唇に触れるそっとした口付けも 優しい
「んっ、あっ、……不死川、くんっ…」
彼の体に回した腕ですがりつくと
不死川がそれに応じるようにぎゅっと
みくりの体を抱き返した
コイツは俺が
誰かと添い遂げるつもりがねぇのを
知ってっからか 俺とこうしてても
恋仲になりたいとかは言って来ねぇ
そして コイツも
昔 婚約者を亡くしてて
もう誰とも 添い遂げるつもりがないのだと
前に話してた
でも……俺は…
そっとうなじの辺りから
髪をかき分けるように彼の指が滑り込んで来て
「んっ、あっ、んんっ、…はぁ…」
「みくり」
「ん?どうしたの?不死川君」
体に触れていた手を離したと思うと
「呼べ」