第5章 君の名前を お相手:不死川実弥
「ううん。悪くない、むしろ、良かった。
ありがとうね、不死川君、来てくれて」
そう言ってみくりがふんわりと笑った
コイツの笑った顔
こう言う笑い方の時の顔
アイツに……カナエに 似てんな
アイツも大概 お人好しだったが
コイツも大概の お人好しだ
今だって自分が就寝する
準備をしてたってぇのに
文句の一つも言わねぇで こうして
俺の傷……見てくれてる 訳だしよ
起こしていた上半身を
処置が出来ないと言われ
みくりに処置台に倒される
いつの間にかみくりが注射器を持っていて
「麻酔するから、じっとしててね」
「んなもん、いらねぇーよ」
麻酔する事に不満を漏らした不死川に
「もう、麻酔。吸っちゃったから。
廃棄するの、勿体ないし?
傷大きいから、使うからね」
チクッと僅かに針の刺さる感じを感じたが
その後は何も感じなくなった
そう言やぁ前に怪我した時に
出血が多かったとかなんとかで
コイツに採血された事があったが
「みくり」
「ん?何?不死川君、もしかして痛かった?」
「や、それは何ともねぇけどよ。あれだ、前に
お前に血取って貰った時あったろ?」
みくりは手を動かしながらも
それがどうかしたんだろうかと考えていた
「お前、血ぃ取んの…上手いんだな」
今は私は傷を縫合してるんだけど
なにゆえ採血を褒められているの?
「ん?え、そう……自分で自分は出来ないから
わからないけど、ありがとう」
「あ、でも、傷縫うのも……上手ぇか。
お前に縫ってもらったら、
跡がそんなに残んねぇし」
「そりゃどうも。単に私が上手いんじゃなくて
不死川君の縫い方が雑なだけだよ」
みくりの言葉に不死川が顔を顰めた
「悪かったな!雑でよ」
「もう、自分の体なんだから、
もうちょっと大事にしてあげないと」
これと 同じような事
アイツにも……言われたな
ー『あらあら、ダメよー、不死川君。
自分の体なんだから、もっと大事に
しないとね』ー
コイツの顔がアイツに似てるからなのか
それとも コイツがアイツみたいな事
言ってくるからなのか
似てるから……気になるのか?
コイツが
アイツに似てるから?
似てる 確かに似てる
でも コイツはコイツで
アイツはアイツだ