第102章 夫婦のバレンタインデーは…後編 お相手:煉獄杏寿郎 現パロ
囁いたついでの様にして
その唇に耳を挟まれる
「…ッ…」
小さく声を漏らすと
ふぅっと耳に息を吹きかけられる
ゾクゾクっと冷たい外気に触れていた耳の穴に
熱いと感じる程の熱を帯びた
杏寿郎の吐息が掛かって鼓膜を揺らすと
自分の耳の奥から背筋に向かって
寒気にも似た感覚が走り抜けていくのを感じる
ぐいっと自分から身体を離して欲しいと
言う代わりに杏寿郎の胸に
みくりが自分の手を当てて
力を入れてその身体を押し返そうとするも
こっちが押し返す力よりも
当然にあっちがこっちの身体を
引き寄せて来る力の方が強い訳で
「いいだろう?みくり。
…別に減るもんでもないんじゃないのか?」
「んッ…、減るとか…ッ、減らないとかって
問題じゃないんだってばっ…、近すぎッ」
「夫婦なんだから、自然じゃないのか?
別に、身体を寄せて、軽く
引っ付けるぐらいいいんじゃないのか?」
杏寿郎がこっちの背中に腕を回して来て
自分の方へ引き寄せながら
軽く引っ付けたいと
杏寿郎が考えている部分…は
唇…なのかも…知れないけど…
「ダメダメッ。
後で…ッ、ここじゃ…ダメ…ッ」
「ちょっとぐらい、雰囲気と言うか
ムードに流されてくれてもいいだろう?
奥さんは、根が真面目…だからな…仕方ない」
スルッと身体から杏寿郎が
自分の身体を離して来て
身を寄せ合う距離だったのが
拳3つ分の距離に戻って
その距離は15センチ以内の
近い距離には違いないのに
衣服越しに感じていた体温を
感じなくなってしまった事を
寂しいと感じている自分が居て
ぎゅっと杏寿郎のコートを掴んで
むうううとみくりが
俯いたままで難しそうな顔をしてるから
「それは、どういう意味の顔なんだ?」
「キスはダメだけど…、離れるのは嫌の顔」
ぷっ…と杏寿郎が吹き出す音が聞こえて
俯いていた顔を上げると
ちゅ…ぅ…と瞼の上に杏寿郎がキスをして来て
「唇じゃ無かったら…いいだろう?」
そう言いながら瞼の上に
数回…キスを杏寿郎が落として来て
スルッと頬を撫でていた冷えた指先が
みくりの唇に触れて来て
その形と感触を確かめる様にしてなぞって来る
「…杏寿郎……ッ」
その自分の唇をなぞる指は
外気に冷えて冷たいのに
熱…いと…感じてしまって居て
こっちだって…したいのに…キス