第23章 惣菜屋さんの筑前煮 後編 お相手:煉獄杏寿郎
「でしたら、尚更…
俺がお手伝いをしたいと言う物だ。
それを貴方にお贈りしたのが
俺であるのなら、それを…
お脱ぎになられる、お手伝いできるのは。
俺だけにしか、許されてはいないはずだ」
私が この着物を脱ぐのを
手伝いたいと…
そして それを許されているのは
自分だけなのだと…の彼の言葉に
トキ叔母さんが言っていた
着物を贈る意味を…思い出してしまった
杏寿郎さんは 私がこれを
脱ぐのを手伝うと言っていて
それは勿論
ただ脱がせるだけではなくて
そう私が考えていたのも
彼には全てお見通しだったようで
彼が 杏寿郎さんが
私の耳元へ口を近付けて来て
他の誰にも聞かれる事が無い様に
声を顰めると
「無論、お脱ぎになるお手伝いをした後は…。
俺が…、貴方をどうするのかは、
ご存じであられますよね?」
どうにもこうにも 彼と言う
煉獄杏寿郎と言う人は
こんな 爽やかな笑顔をしながら
とんでもなく厭らしい事を言ってくるのか
只 手を繋いで
来た道を戻っている
只 それだけの事なのに
指を絡めて繋いだ手を
時折強く握られて
指先で時折 手の平を
擦るようにしてくすぐられる
手を繋いで 歩いている
それだけの事しかしていないのに
隣にいる彼を
酷く それも酷く
意識してしまって 仕方ない
家に戻ると
出る時は確かに
トキ叔母さんは店番をしとくと
言っていたのに
また 店の表に
午後は臨時休業の張り紙がしてあって
しっかりと玄関には鍵が落としてあった
「佐伯さんは、お帰りになってしまわれたのか?」
「え、ええ。その様ですね。
鍵が掛かっておりましたし…」
そう言いながら
鍵を鞄から出して玄関を開くと
中にもトキの姿はなく
店の中はしん…と静まり返っていた
厨房の作業台の上に
惣菜がラップをかけて置いてあり
でも その量も減っているが
丁度いいぐらいに残っていて