第22章 惣菜屋さんの筑前煮 前編 お相手:煉獄杏寿郎
そう自分の隣から声が聞こえて
みくりは杏寿郎の方を見上げた
彼と視線がぶつかると
ニコッと彼が微笑みかけて来て
「俺は、貴方以外の女性と等とは
一切考えておりませんので」
自分の考えている事を読まれていたのか
そうキッパリと言い切られてしまった
「お忘れになられましたか?
みくりさん。俺の世界は貴方だけだと…、
俺は申し上げたはずだ」
そう 彼に言われたのは憶えている
彼は反対された所で
諦めるつもりはないと
そう 私に言って来ていて
「その様な顔をなさいますな。
大丈夫。杏寿郎がついております」
「杏寿郎さん…」
そんな風に話しながら
歩いている内に
もう程なくして
彼の家に着くと言う時になって
再び 自分の胸が緊張してきて
ざわざわとして落ち着かない
ギュッと繋いでいた手を
彼が強く握って
私の緊張を
解してくれようとしてくれたので
「すいません。大丈夫です…」
そう気丈に振舞ってはみた物の…
内心… どんな事を言われるのかと
緊張が増すばかりだった
彼の家に
煉獄家に着くと
中庭に面する 和室へと
彼の弟である 千寿郎君が案内してくれた
「すいません、こちらでお待ち下さい。
今、父上をお呼びしてきますので…」
そう 私に告げて頭を下げると
和室の襖に手を掛けようとした時に
ひとりでにその襖が開いて
そこには 彼等の父親である
煉獄 槇寿郎が 立っていた
彼と彼の弟と同じ
あの独特の髪の色をしていて
顔の造りも驚くほど そっくりだった
杏寿郎さんが20年ほど年を取れば
ああ なるのだろうかと
みくりは思わず 想像をしてしまった
「今日は、
急にお呼び立てして、申し訳ない」
そうこちらに槇寿郎が言って来て
「いえ、今は…店は空いている時間ですので…」
そう社交辞令的な会話を交わして
槇寿郎は和室の上座に腰を降ろした