第22章 惣菜屋さんの筑前煮 前編 お相手:煉獄杏寿郎
ふたりで並んで
通りを歩いて 彼の家を目指す
こうして並んで歩いてると
傍から見れば
恋人同士に見えるのだろうか?
「やはり、貴方に良くお似合いだ…」
そうこちらをうっとりとした
視線で杏寿郎が見て来て
思わず 恥ずかしくなってしまった
「すいませんっ、いつも頂くばかりで…」
「お気になさる事ではありませんが?
それに俺はいつも、
貴方から頂いておりますから」
「え?私は何も
…差し上げては…おりませんよ?」
「まぁ、貴方がそう仰るのであれば。
今はそう言う事にして置きますが。
緊張…しておられますか?みくりさん」
杏寿郎がこちらへ手を伸ばして来て
みくりの手を握った
大きくて温かい手
そうして貰っていると
自分の緊張が和らいでくるのを感じる
「え、ええ。その…噂を…」
町を飛び交う 噂話で
彼の父親の噂を聞いた事があったから
奥様を亡くしてから
仕事も手に付かなくなり
酒におぼれて
自室に籠り切りになられていると
お寺の住職さんが
何度か説得に行かれた様にも
噂では聞いていたが…
出会う事すら出来なかったと
だから 余計に疑問なのだ
どうして 彼の父親は
私と話をする気になったのだろうかって
「これでも、お飲みになられる、
酒の量は…大分減った方だ…」
そう自分の父親の話をする
彼の表情は浮かない
「では、あの噂は…」
「貴方が知っている、噂は…間違いではない。
きっと今日、貴方に出会った所で
貴方に対して酷い、
物言いをなされるかも知れない」
「杏寿郎さん。それは元より、
覚悟はできておりますもの。
もし、私がお父上の立場であるなら、
結婚はおろか、交際すら否定するのは
無理のない事…ですから、
その辺りは、ご心配は要りませんし」
そう言って 気取られない様にして
精一杯 自分に出来る笑顔を見せる
元より 身分違いなのは 知っていたのだから
夢を夢にして 終わらせるのには
丁度いいのかも知れない
「もし…の話ではありますが」