第22章 惣菜屋さんの筑前煮 前編 お相手:煉獄杏寿郎
畳の上には
乱雑に脱ぎ捨てた お互いの着ていた物が
どちらがどちらの物か区別がつかずに
入り混じっているのも 構わずに
貪るように 熱い
息もできなくなりそうな
そんな 口付けを交わす
そして 混じり合うのは
お互いの熱い 熱のこもった吐息
お互いの名を呼ぶ声と
それに応じて
何度目かもわからない口付けを
更に重ねて行く
彼の手が…
唇が
舌が…
私の身体を 隅々まで 愛して
「んっ…、ハァ、杏寿…郎、さんっ…」
彼に 抱かれる度に…
私はどんどん 女としての
喜びに目覚めて 行くみたい…
「ハァ、…みくりさん…、
お辛くは…ありませんでしょうか?」
そう 優しく
労わる様にして 問いかけられる
もう 何度も 彼に抱かれて
そうされる度に
私の身体と
彼の身体が馴染んでいくみたい…
もう あたかも
何年も ずっと
そうして来たかのよう…に
それが 自然な
当たり前に… 私の中で変わって行く
ギュッと彼の身体に縋りついて
その与えられる快楽に嬌声を上げて
自分の身体が
喜びに打ち震えているのを感じる
「あっ、…はぁ、はぁ、んんぅ」
彼が あの時に
あの祭りの夜に 言っていた様に
私の全てが…そうされる度に
彼に…彼の物に 変わって行く
自分の中にあり続けていた
あの人との
夫との行為の記憶が薄れて行くのを
感じていた…
身体を重ね終えて
畳の上に脱ぎ散らかしていた
お互いの乱れた衣服を整えて
着直すと
その途中で彼と不意に目が合ってしまって
先程の情事を思い出して
気恥ずかしくなってしまう
「俺は…物足りない所だが。
もうそろそろ、店も忙しくなる
時間になるし、俺はお暇させて頂こう」
そう言われて
また 更に
名残が惜しくなりつつも
数回 口付けを交わして
彼を見送った