第21章 惣菜屋さんと煉獄さん 後編 お相手:煉獄杏寿郎
ふと会話の切れ間に
通りに目を向けると
人の流れが ぷっつりと途切れて
なくなっているのに気付いた
ああ そうか
もうそんな時間か
皆もう 花火が見える場所へ
移動してしまってるんだ
「あの。杏寿郎さん…花火は…」
「今から、河川敷に向かっても
場所は望め無さそうだ。随分と長い事
話し込んでしまっていた様だ…。
もう、遅れてしまったのであれば
今更慌てても仕方ないと言う物」
通りに戻ろうとして
歩き始めていた
私の手を杏寿郎さんが掴むと
身体を引き寄せられて
そのまま 唇を重ねられる
角度を変えて 何度も重ねられると
舌で上と下の唇の間をなぞられる
「今であれば……、人目を気にする
必要もないと思うが?」
それは 確かに
彼の言う通りだ
もうこの辺りに誰も居ないだろう
「あの…杏寿郎さん」
「どうかされましたか?みくりさん」
みくりが杏寿郎に手を伸ばして
その浴衣の袖をぎゅっと握る
「花火……、
まだ間に合います…よ?と言ったら。
どう、なさいますか?」
「いや、確かに……そこからなら
花火も見れるだろうが、しかし…」
彼が そう戸惑っているのも当然だ
私が知っている
今からでも花火が見れる場所は
あの店の 二階だからだ
「でも、どこから見ても花火ですから」
私は 今 どんな顔をしているんだろう
暗いから良く見えてないのだろうか
結婚と言う 形にも拘らないと言われ
子を成す必要もないと言われてしまった
それに さっきの言葉……
「俺には……花火を大人しく、
見て居られる自信がないが……?
それとも、ここまで来て
……まだ、貴方の中では
そうなる事を含んだとしても
あの金への礼の範疇だと?」
スッと
みくりが杏寿郎の唇に
自分の人差し指を置いた
これ以上は 何も言わなくてもいいと
そう念を込めて…だ
「せっかちは嫌われますわよ?
杏寿郎さん。まだ…夜は早いですから、
答え合わせの時間でもありませんでしょう?
ここから、
店までの近道を知ってますから…。
ついて来て、…頂けませんか」