第85章 秋は巣ごもり 後編 お相手:煉獄杏寿郎 現代パロ
まぁ その納得の出来ない顔を
見ていれば ご機嫌を損ねたのは
杏寿郎の目から見ても分る事で
「まぁ、折角、冷えた地酒も来たんだ。
みくりの好きな、カニも来るんだしな。
そんな所から、俺を睨んでないで。
こっちに来たらどうだ?みくり」
和室の中央の机には
もうすぐ夕飯が運ばれて来るから
窓際に設置されている方のテーブルで
食事よりも先に届けられた地酒を
一緒にこっちに来て飲もうと誘った
「理由を俺の口から聞くまで、
そこから動かないスタンスか?」
みくりからすれば
行きたくもないトイレに
俺に無理やり強制的に
行かされたと思ってるのだろうが
ふぅーーっと杏寿郎がため息を付くと
手に取った冷酒の蓋を開けて
2つの冷酒グラスにトクトクと注いで行く
「いい香りだな…、京都の地酒か」
冷酒グラスに鼻先を近付けて
その香りを杏寿郎が楽しんでいて
さっきまで 部屋の敷居の向こうに居た
みくりがズイっと這いながら
部屋の中に少しだけ入っていて
「いやぁ、美味そうだ。どこかの奥さんは
飲みたくないらしいからなぁ~。
寂しい、旦那さんは独り酒でもするか」
そう白々しいまでに
杏寿郎が白々しくわざとらしさ満載の
棒読みの演技をして来て
「やっ、ダメッ、待って…ッ、飲んじゃダメッ」
そのまま その場所から
部屋の真ん中の辺りまで
グラスに口を付けようとした杏寿郎を
止めようとして みくりが
部屋の中を這いながら移動していて
「んーー?奥さんは俺みたいな
旦那さんとは飲みたくないんだろう?」
「ちっ、違うっ、違うのッ!
一緒に飲まないなんて言ってないぃ!
やぁああん、杏寿郎の馬鹿ぁ~。
意地悪ぅうううっ、一緒に飲みたいぃいいっ」
バタバタと自分の不満を
みくりが畳の上で手足をばたつかせながら
全身で表したと思ったら
ピッタリとその動きを止めて
和室の中央で畳の上にうつ伏せになったまま
全く身動きひとつしなくなって
「杏寿郎」
畳の上に顔を付けたままで
小さな小さな声で名前を呼んで来て
「…………何だ?みくり」
その後に何が来るのかと
杏寿郎が恐る恐る尋ねると
「杏寿郎の馬鹿っ、意地悪ぅう、変態ぃ~」
「最後っ、最後、最後のが余計だ」
「杏寿郎」
「何だ?まだあるのか?」