第21章 惣菜屋さんと煉獄さん 後編 お相手:煉獄杏寿郎
私はその時 11だったから
その日の夜の記憶は
今でもしっかりと記憶していて
少し離れた所に
お目当てのりんご飴の出店を見つけて
りんご飴を購入すると
あの夜に彼が泣いていた
路地裏を目指した
どうして彼は あの夜の事を
今になって 15年経って
なぞりたいと そう望んでいるのか…?
私がりんご飴を持って
その路地裏へたどり着くと
彼はそこで 立っていて
「私の記憶が確かなら、しゃがみ込んで
泣いておられた様にありますが…。
ねぇ、君。泣いてるの?これ、…あげるから。
泣いちゃダメッ。男の子でしょ?」
15年前の夜をなぞらえて
そう彼に声を掛けたように
りんご飴を差し出しながら
みくりが杏寿郎に言った
彼はそれを聞いて
大きく目を見開いたと思ったら
それから 笑った
自分に向けて差し出された
りんご飴を見ると
スッとこちらへ手を伸ばして来て
彼に向けて渡そうとした
私の手ごと 割りばしを握り込まれてしまう
そのまま りんご飴に顔を近付けると
ガリッっと音を立ててかじった
そっと私の頬に手を添えて来て
「りんご飴の君。よろしければ
貴方のお名前を、俺に……
教えて頂けませんでしょうか?」
「私の名は…、小野寺みくり…ですよ」
熱いと感じるのは
熱帯夜の所為ではなくて
きっと彼の視線の所為で
りんご飴を握っている
私の右手の上から私の手を
包み込むようにして握られてしまう
「あの夜に、俺を…見つけてくれたのが
みくりさん、貴方で良かった……。
そして……こうして、再び貴方と
巡り合わせて下さった事を……。
何かに感謝したい気分だ」
「大袈裟ではないでしょうか?
あの…、煉獄さん…?」
「杏寿郎」
「へ?」
「杏寿郎……、俺の名は杏寿郎です。
貴方の口から、そう呼ばれたいのですが?
煉獄さんではなくて、俺の名を……、
呼んでは頂けないだろうか?みくりさん」