第20章 惣菜屋さんと煉獄さん 中編 お相手:煉獄杏寿郎
そういつものトキからは
想像もつかないような
そんな落ち着いた口調で言われて
その言葉が 胸に染みて来る
トキ叔母さんが私を
自分の娘の様に思ってくれていて
私の 幸せを…望んでくれてるんだって
そう 気が付いたから……
「うん、ありがとう……トキ叔母さん」
「何だい?改まっちまったりして」
「トキ叔母さんが嫌じゃなかったら……、
ううん、なんでもないっ。そう、…だね、そうする。
楽しんで来るね?…祭り。ありがとう、浴衣……」
ー 行ってきます トキ母さん ー
そう 心の中で
みくりは呟いた
声に ならない
声で
バンっと背中をトキに
痛い位に(いや 実際結構痛いのだが)
叩かれて
「きゃあっ」
背中がビシッと伸びてしまう
「顔。しゃんとしな?」
鼻先が掠めそうな距離で
じっと顔を見つめられて
トキにそう促されるままに
私はいつもの笑顔を作った
そうしている 私の顔を見ると
目の前に居たトキ叔母さんは
満足そうに頷く
「女は愛嬌。笑顔が一番だよ?
自信持ちな、みくりちゃん。
アンタは静江さん譲りの別嬪さんだよ。
さ、行っといで」
そう言って
みくりの両肩に手を添えて
みくりの身体を 玄関の方へと向けさせる
「え?トキ叔母さん?行っといでってまだ……」
正確に時刻を決めてはいなかったが
祭りに行くには少々時間が早すぎるのではと
私は疑問に感じて
トキ叔母さんの方に顔を向けつつ
そう漏らすと
「お迎えだよ?」
そうまるで 煉獄さんが来るって
それを知っているかの様に
トキ叔母さんがそう 言って
ガラガラと店の戸が開いたと思ったら
「ごめんください」
と言う声と共に
フワリと
白いタンポポの綿毛の様なものが
開いた戸口から
店の中へと舞い込んだ様に見えた
気がしたのだが……
それに 私が目を凝らすと
見間違いだったのか
それはどこにも見当たらない