第20章 惣菜屋さんと煉獄さん 中編 お相手:煉獄杏寿郎
煉獄さんと別れて
自分の家に入ると
家の戸に鍵を落とした
玄関を背にして
頼るようにして身体を預けると
みくりがそのままその場に
ズルズルと崩れて座り込む
煉獄さんと……
口付けて… しまった
まだ 彼の唇の感触が
自分の唇に残ってる
それも お金……
前の夫が作って
私になすりつけた借金も
肩代わりすると 申し出てくれた
でも あの彼の初めの口付けの意味は
私にそれを…話させる為で
でも その後にされた
口付けは 別の意味の口付けであって
それに 明日……きっと 私は彼に
抱かれ……る 事になる…のだろう
だけど 私に
とうが立った 26歳の年増女に
250万の価値など到底ない
けど それが例え10年前であったとして
私が16歳の生娘であったと仮定したとしても
大凡 私には そんな価値がないのは
分かり切っている……事実
でも……
理由には なってしまう
私が 彼に抱かれる事の
理由に……
それがなければ
年齢差を理由にかこつけて
彼がそう関係を迫ったとしても
私は断われるから
けれど そこにあるのは
恋愛感情かと言うと
そうでもないのかも知れない……
後ろめたさと
申し訳なさを
彼に感じずには居られない
だったら 私の中にある
彼にそうされたいと
願うこの感情は
何と言う 物なのか……?
ズルい ズルい
頭の中でその言葉がぐるぐると回る
玄関の戸を背にしたままで
みくりが自分の両手で
自分の顔を覆って押さえると
「ごめんなさい…、煉獄さん。
きっと……ズルいのは私の方……だから」
その言葉はまるで
懺悔でもあるかの様にして
私の口を突いて出た