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ひみつのひめごと【鬼滅の刃/R18】

第20章 惣菜屋さんと煉獄さん 中編 お相手:煉獄杏寿郎


みくりと別れ

夜の誰も歩く人も居ない
閑散とした通りを杏寿郎は歩く


「………………」


不意にその場で
杏寿郎がピタリと立ち止まった


自分の指を
自分の唇に押し当て

スッと目を細めて
先程のやり取りを思い返してみる


「もう少しばかり…俺としても、
欲張りたい所でもあったが。
今夜の所は見逃すとしよう、
名残惜しくもあるが。だが、…それもいい。
それに元より今夜は、朝顔の君とは
逢瀬の約束は……、していなかったからな」


漏らすようにしてそう言うと
地面に落としていた視線を戻し
そして 空を見上げた


「それにしても、……だ」


杏寿郎の頭の上には


遥か上空の
高い位置に月があって


その月光は


高い位置にあると言うのに


随分と眩しく感じてしまって

杏寿郎は
少しばかり目を細めた


「本当に俺は…、悪い男かも知れん……な。
ふむ。困った……な、全く。朝顔の君には、
ズルくなるといいとは、言ってはみたものの、
……ズルくなるのは俺の方に…、
なりそうでもある。少々…腑には落ちないが」


何かを思案するように
自分の顎を触りながら
うーむと唸り声を上げると


「だが、いっその事、ズルい男に
成り下がるのも。悪くはない…か…?
だとすれば、俺をそうさせる貴方は
ズルい人だ……。そう感じずには、
居られないが…な」


フッと杏寿郎は
自嘲的な笑みを浮かべて


「明日を…楽しみにするとしよう。
ズルい嘘を、どちらが最後まで
付き通せるか……。勝負すると言うのも、
また……一興と言う物」


月に雲がかかり
闇が降りて来る


「おやすみなさい…。みくりさん」


みくりの家のある方向へ向けて
そう杏寿郎が言うと


再び 歩き始めた


そのまま夜の静寂に

その闇に



彼の後ろ姿は飲まれて行った


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