第20章 惣菜屋さんと煉獄さん 中編 お相手:煉獄杏寿郎
そっと その大きな手が
私の頭に触れて 髪を撫でて行く
大きくて
筋張っていて
男らしい 手……
彼の手が 頬に添えられて
そっと触れる 指先が
その手からは想像もつかないほど
優しいから……
「みくりさん……。では
前金を頂戴してもいいだろうか?」
そう問いかけられた彼の問いかけに
私は小さく頷いた
これは ズルいのだろうか?
自分の事を 売っていると同じだろうか?
けど 私はとうが立った 商品価値も低い女
これは 支払いにするには
余りにも 少なすぎると
そう 思わずに居られない
でも 他に何か……思いもつかず
そこに 明確な理由が出来てしまえば……
もう 断る事が
必要もなくなってしまって
ズルくなるのは
私? それとも 貴方なの?
それとも 両方?
そんな事を考えながら
瞼を閉じれば
彼の口付けに
自分の身を委ねるだけ…
何度も角度を変えながら
唇を押し当てられて
唇に唇を挟まれて食まれる
そのまま チュウっと唇を軽く吸われて
少しばかり呼吸が乱れて来た頃
それ以上に 深まる事はなく
もどかしい 口付けを繰り返される
もどかしいと 私が感じてるのは
きっと その深い方の口付けを
彼にして欲しいって期待してるから?
唇から唇を離されて
首筋に口付けを落とされると
思わず身体がビクリと跳ねて
肩に力が入ってしまった
はぁっと熱い吐息が耳に掛かって
「みくりさん…」
そう囁くように名前を呼ばれて
その声が鼓膜を揺らす振動さえ
耳の中にゾクゾクと広がって行って
きゅと自分の唇を硬く閉じた
「貴方も……。この時間が終わるのが、
名残惜しい…とお感じに?」
「…………っ」
自分が思ってる事を
そう 意味深気に 問いかけられて
ドキリと胸が跳ねてしまった