第20章 惣菜屋さんと煉獄さん 中編 お相手:煉獄杏寿郎
はて…と漏らすように
杏寿郎が言うと
困ったなと言いたげな表情を浮かべて
「貴方は、その元ご主人の借金の肩代わりを
俺にさせるのは、忍びないと……お考えに?
ハハハハハハハッ。みくりさん。
やはり貴方は……、素晴らしい女性の様だ。
もっと…、貴方は。ズルくそれでいて
……したたかになればいいだけの事」
スッとみくりの手を
恭しい所作で杏寿郎が
自分の手に取ると
「ズルく…なればいい……と?
私にそう仰るのですか?」
それも ただズルくなるんじゃなくて
もっと ズルくなればいいと
彼は言うのか
私に…?
「ああ。なればいい。
俺は……貴方に惚れている男だ。
そんな事を、…後ろめたく感じる
必要もないと言う物。
俺が、勝手にそうしたいと思ってする事だ。
みくりさん。貴方は、利用できるものは、
何でも利用なさればいい。貴方ならば、
大凡それも許される…と言う物」
そう言って微笑を浮かべながらも
みくりの手の甲にそっと口付けを落とすと
その手を開放する
おかしな事を 言う人だ
自分を利用しなさいだなんて
一体 何を考えてるのだろうか…?
それも そうするのが当たり前かの様に
そうしなさいと 言うのか
私にそんな価値なんてないのに
何もないのに
彼の言葉が 私に
何の価値もない私に
付加価値を与えて行くかの様…
「ふむ。ならば
……こうしてはどうだろうか?」
こうするとは どうするのだろうか?
そう思いながら
杏寿郎が言葉を続けるのを待つが
彼がその続きをまだ 言って来ないので
「こうする…とは?」
「貴方が俺を利用するのが気が引けると
そう思われるのであれば。
貴方を……明日、俺が買い取ると言うのは?」
私を 買い取る?
買うって言ったの?
250万で 私を?明日…?
「へぇえええっ!買い取っ
…いや、そんなっ、私にはそんな金銭的な
価値がっ…、そんな大金とは釣り合う様な
物でも、なんでもありませんですからっ。
む、無理です、無理ですからっ」