第20章 惣菜屋さんと煉獄さん 中編 お相手:煉獄杏寿郎
そして どうしようもない位に
私は 彼の前だと
本当に どうしようもなく
女でしか…ない
それは 彼がそうするの?
彼の言葉が 私をそうさせるの?
私を 只の女に してしまう… の?
耳元で彼の吐く息が聞こえる
吐息まで熱がこもっているような
そんな 熱い吐息が 聞こえて来て
「みくりさん。貴方の弱みに、
いっその事付け入りたくて、仕方ない。
許可を頂きたい。貴方にそうする事を
…俺に許しては貰えませんか?」
なんて事を彼は聞いて来るのか
いや 聞いて来るだけじゃない
付け入りたいって それも許可が欲しいって
そう囁く 声ですら
普段の好青年の彼からは
想像もつかないような
そんな 色気をはらんでる
「なら、それが叶わないのなら、お話頂こう」
そう
いつもの声のトーンで言うと
触れるほどに近かった
身体の距離を離される
そう言われて
気が付いてしまった
これは全て 彼の
煉獄さんの作戦だったんだって
だってそう 彼の笑顔が言っている
私が大凡 話したがらないそれを
私の口から導き出す為の
策略でしかなくて
そして 私がこれを断ると……
どうなるのかも 分かるから
話すよりも 他になさそうではあるが
はぁっと
みくりが大きなため息をついて
「あの、煉獄さん……中に…」
込み入った話になるからと
杏寿郎に店に入る様に促すと
「いや、それは遠慮しよう。
この様な夜分に、女性が一人住まう家に
上がり込む訳には行きませんので……」
そう 断られてしまった
それはとても 悪い男の言う
言葉とは あまりにもかけ離れていて
それと同時に
さっきの彼の行動の意味する所が
私には分かってしまって……
そうまでしても 煉獄さんは
私の話を聞きたいって
思ってくれたんだって
そう思うと 自分の胸が
酷く締め付けられるのを感じる