第20章 惣菜屋さんと煉獄さん 中編 お相手:煉獄杏寿郎
そうは言ったものの
その腕に込められた力も
その言葉も
そうではないのだと 知らしめていて
「俺は、真剣です。冗談ではありませんが?
何故、そこまで遠慮をなされるのか。
話しては……貰えませんか、みくりさん。
でないと、離して差し上げれないが?」
男性の
それもかなり体格に恵まれた
煉獄さんの力はとても強くて
私が身じろいだ所で
逃れるのは難しいが……
でも そんな話をして…も
でも 話すまで 離してもらえないって
でも……
話せばきっとご迷惑になってしまう
話なんて到底できやしないのに
「出来ませんっ。…だから、離してっ…」
「それは出来ない相談と言う物。
……お困り、なのでしょう?」
そう尋ねて来る声色は
私を心配してくれているのだと
そう私が感じるくらいに
優しくて……
困っているのは事実ではあるが
これは 私の…
「言えませんっ。…私の問題ですので…、
言え…ないんです。ごめんなさい」
「なら、ひとつだけ。お聞きしても?」
そう 確かめて来る声も
更に更に 優しくて
乱れていた
さっきまで
あんなに乱れていた心が
不思議と 落ち着きを取り戻して
来つつあった
その理由が 何故なのか
私にも分からないが……
「みくりさん。無礼をお許し願いたい」
そう突然 彼に言われて
彼の言葉の意味する所が分からず
無礼を…許す? 何の事?
「れ、煉獄さん……?」
その言葉の意味が分からずに
彼の顔を見つめてしまった
でも でも…
目の前にすぐ 目の前に……
その彼の顔があって
鼻先が掠めそうに近い…
ともすれば……
「あの…、煉獄さん。
無礼と言うの…はっ、…ーーつっ!」
そう 問いかける言葉を
私が紡ごうとした唇を
彼に 塞がれてしまって
ほんのわずかに
触れただけの
一瞬の 口付けが済んで
唇を 解放される