第20章 惣菜屋さんと煉獄さん 中編 お相手:煉獄杏寿郎
その事に私が
気が付いたのはしばらくしてからで
ここに座っていても
どうにもならないからと
みくりが立ち上がり
着物に付いた砂を手で払っていると
どこからか声を掛けられた
「もしや、誰かと思えば。みくりさんか?
この様な時間に、外で何をなさっておいでで?」
どうして なんだろう
なんで 煉獄さんがここに?
「れ、煉獄さんっ?煉獄さんこそ、
この様な時間にこの様な所で、何をなさって…」
「俺は、この辺りの見回りを……ん?」
何かに気が付いたのか声をあげると
煉獄さんの その赤い瞳が
真っすぐに私に向けられていて
「もしや……の話ではありますが、
みくりさん。何かおありになられましたか?
…お話、頂けませんか?もし、貴方に
差支えがないのであれば、お聞かせ願いたい。
俺でお力添えが出来るのであれば
…貴方の力になりたいのだが」
私の 顔見ただけで
彼には全て 分かってしまっていた様で
何があったのか
聞かせて欲しいと そう言われ
私は言葉を詰まらせてしまった
それを彼に話していいのかと
話す事すらも 憚られてしまって
何も言えずにいた
その次の瞬間に…私の身体は
陽だまりの様な
そんな匂いに包まれていて
私は彼の腕に抱きしめられてるんだって
そう 気が付いた
でも 私の中にあるのは
それを喜ぶような そんな感情ではなくて
「あの…、煉獄さんっ。
別に、何もございません。
私、…明日、
楽しみにしておりますので…。
お身体がっ…、近すぎますから…。
離れて…下さい。本当に大丈夫…、
ですので。ご心配には及びません」
そう言って
自分を抱きしめている
彼の胸を押して
その体を引きはがそうとする
「……お話、頂けるまで。
離す事は出来ない…と言ったら?」
そう言われて
更にその腕に力を込められてしまう
「れっ、煉獄さんっ、
何を……おふざけになるのも…」