第78章 ピックアップ御礼 秋と言えば…? お相手:煉獄さん現代パロ
その記憶が彼女の中の
消せない彼との記憶なのであれば
その当時の彼女の思い出にも似た記憶を
俺とのそれで上書きしたいと
そんな風に感じてしまうのは
嫉妬とか独占欲とかそんな感情でしかないが
今夜の行為の目的が
自分の中でそのベクトルを
じわじわと別の方向へと
変えつつあるのは事実ではあるが
余り 今はそれを悟らせるべきではないか
「杏寿郎?どうしたの?
迷路、先行かないの?」
そこで足を止めたままで動かない俺に
みくりが声を掛けて来て
彼女の後ろに秋の色のコスモスの花が
カサカサと揺れているのが見える
違和感を感じた
揺れている?風が吹いてないのに?
ガサッとコスモスの茎の中から
小さな子供が出て来て
その子の後を追いかけて
その子の姉らしき少し大きな子が出て来て
どうもと言いたげに
その子がこちらに小さく頭を下げるが
こっちに構う様子もなく
小さな子の方は括ってあるコスモスで
作られている道を無視して
更に茎の中の道なき道を進んで行くので
その姉らしき子供がそれを追いかけて行く
それから少し遅れて
両親らしき男性と女性が
こちらに頭を下げながら
正規のルートでその2人の名前を呼びながら
探している様なので
「あの、お子さんならあっちに行きましたよ」
「すいませんっ、ありがとうございます」
2人の子供が向かって行った方向を
杏寿郎が指さして
そう言えばあっち迷路の入口の方だ
「西井くーーーん!
その子っ、捕まえてぇええっ!!
親御さんが追いかけて居られるから、
捕まえてあげてーー!」
みくりが迷路の入口に居るだろう
西井にそう声を張り上げて叫ぶと
コスモスの向こう側から声が聞こえて来て
キャーキャー言いながら声が移動してるから
多分このコスモスの向こう側で
西井があの子をあの子の姉と追いかけている事だろう
そうしてる間にあの子のご両親も
追いつくだろうから
あの子の身柄がご両親に
確保されるのは時間の問題だろうな
「やっぱり、兄弟はいいな」
「杏寿郎のあの弟さんは、
小さい時から穏やかな
お子さんだったんじゃないの?」
「歳の離れた兄弟だからな、喧嘩に
なったりもする事は無かったが。
それは君の所もそうだろう?」
「まぁ、異性だし歳も離れてるし。
私はこっちに居たからね、余計にね。でも…」